研究概要 |
本研究は,地震や洪水などによる自然災害被災後の事業継続計画を考慮した,農業水利施設のアセットマネジメント手法を開発することを目的としている. 滋賀県高島地区の水利システムデータに営農情報,強震度予測マップ,都市計画情報をGIS上に統合し,施設の劣化によるアセットマネジメント,地震による被災確率を考慮したアセットマネジメント手法の検討を行った. また,東日本大震災で被災した陸前高田地域の実態調査を現地で行った.当地の農地で電気探査とボーリングによって地下水をサンプリングし塩分測定を行った.その結果,被災による地盤沈下によって農地の広い範囲において地下水の塩分濃度が高い状態であることが判明した.これは今後の復旧の大きな焦点となる. 同様に震災で被災したダム法面のリップラップ材の挙動をDDAを用いてシミュレーションし,上方は堤体に滑りが発生している可能性があるが,下方法面は石材が地震によって移動しただけであることが判明した.実際の補修工事は法面全部を剥ぎ取り,再締固めされているので,より安全側の処置であることが分かった. 震災で発生する確率の高い堤体軸方向の亀裂のメカニズムについて,室内実験によって検討した.その結果,引張りひずみがその原因であることが分かった.しかし,解析では引張り応力が堤体上下方向に卓越する状況を再現できなかった.このメカニズムについては継続して検討することが必要.パイプラインの変形調査や堤体の体積変化の把握は,構造物の劣化,被災の程度を把握する上で重要である.本研究ではカメラおよび1Dレーザーを使った手法でパイプのゆがみを計測する手法の開発を行った。また,3Dレーザースキャナーによる体積測定手法の開発を行った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ため池診断の調査は実際の東日本大震災での被災状況から農地の沈下調査に変更したが,このような事例は過去になく今後重要な課題となる可能性があるので継続して検討する.ため池診断に関しては,過去のデータの分析を進め,新たな評価手法の開発を検討する.実際の滋賀県の情報を用いたアセットマネジメントの検討や,パイプラインの変形調査法の開発はほぼ予定通り進んでいる.
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次年度の研究費の使用計画 |
微小亀裂探査実験で用いるセンサーで予定より安価なものが市販されていたので,それを使った検討を行ったために直接経費を次年度に持ち越した.備品に関しては施設との調整もあるが,今年度はさらに多くの実験,計測を行うので,予定通りの研究費を使用する.
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