研究課題/領域番号 |
24380135
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
小川 幸春 千葉大学, 園芸学研究科, 准教授 (00373126)
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研究分担者 |
江頭 祐嘉合 千葉大学, 園芸学研究科, 教授 (80213528)
平井 静 千葉大学, 園芸学研究科, 助教 (90432343)
疋田 慶夫 愛媛大学, 農学部, 教授 (50127908)
山本 奈美 和歌山大学, 教育学部, 准教授 (20351934)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | バイオマス / 未利用資源 / 機能性物質 / 食物繊維 / 分離 / 回収 |
研究概要 |
本研究は未利用資源であるカンキツ果実果皮部の有効活用法確立を目的とする.平成25年度は,果皮各層組織の力学的性質の違いを利用すれば,層ごとに組織片を順次分離・回収可能なことを確認した.また得られた組織を機能性成分の損耗が比較的抑制し得ると考えられる凍結乾燥処理によって乾燥加工し,粉砕時の熱負荷がほとんどない回転式磨砕機によって粉末化することで各層の粉末を作製した.得られた粉末は,ふるい分けすることで組織細胞の崩壊程度を区分し,粉末特性とともに含有成分の溶出性を調査,検討した. 【材料および方法】愛媛県および和歌山県で収穫されたウンシュウミカン果実を実験試料として用いた.果実果皮部を表層から切削することでフラベド層の組織片のみを回収し,直後に凍結乾燥した.得られた乾燥物は回転式磨砕機で果皮細胞の大きさを考慮して分級できるよう適度な大きさで粉砕した.粉末は脱酸素剤および乾燥剤を封入した光を透過しない密閉式容器に貯留するとともに,安息角などの粉末特性および分級された粉末試料の色素溶出性について検討した. 【結果および考察】 粉砕後の分級により,粒度分布が75μm以下,75-150μm,150-300μm,および300μm以上の4段階に試料粉末を区分した.なお,粒度を150-300μmに調整した粉末試料の粒子密度,かさ密度および空隙率は,それぞれ1.5kg/m3,0.5kg/m^3,65%であった.粉末試料を蒸留水に浸漬し,振盪によって色素の溶脱程度を調査したところ,より粒度分布の小さい粉末試料ほど色素溶出の速度が大きくなる傾向を示した.このため細胞形状を維持可能な大きさで粉末化すれば,細胞内に含有される色素系の機能性物質の特性を保持できると考えられた.ただし,浸漬液の温度等,溶出に関与する諸条件は考慮していないため,今後溶出速度の算出とともに検討する必要がある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画通りにウンシュウミカンの収穫期に合わせて実験を行っているが,処理した試料の機能性維持を確認するために抗酸化性などの評価が必要となった.このため,当初予定の研究スケジュールにやや遅れが生じている.
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今後の研究の推進方策 |
機械的な切削分離法によって回収された果皮各層の組織片は細胞構造を保っているため,その細胞内に含有する機能性成分の品質は維持されると類推される.平成26年度以降は,細胞構造内に保持された機能性成分の効果的な取り出し方法を検討する.具体的には,機能性物質として細胞内に含まれる色素を考慮し,浸漬時の溶出速度や溶出量などを検討する.測定法として溶液の透過光スペクトルの変化を評価する.
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次年度の研究費の使用計画 |
当初予定の研究スケジュールに遅れが生じたため,実験補助に充てる謝金や物品購入のための研究費使用に遅れが生じた.また,海外製購入予定物品(ドイツ製顕微鏡用光学フィルターなど)の購入も納入に遅れが生じている. 試料の抗酸化性検討に時間がかかっているため,それらの測定法を早急に確立する.確定後の作業はルーチン化可能なため,当初予定していた実験補助を雇用して謝金を支出する.また,H25年度に納入が間に合わなかった購入予定物品(顕微鏡用消耗品など)を購入する.
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