研究概要 |
キュウリを3波長型白色蛍光灯(FL)またはメタルハライドランプ(ML)下で育成し,うどんこ病菌の分生胞子を接種した.接種後,植物を同一の環境条件で育成し,接種後7日目に子葉向軸面におけるうどんこ病の病斑数を数えた.FL下で育成した実生に発生したうどんこ病の病斑数は,ML下で育成した実生よりも少なかった.この結果から,FL下で育成することによって,ML下で育成するよりも,キュウリのうどんこ病抵抗性が向上することが明らかとなった.FL照射光に順化した葉は厚く,色が濃くなる傾向がみられ,表皮組織,柵状組織,海綿状組織が厚くなる傾向がみられた.FL照射光に順化した葉の表面構造の違いがうどんこ病の生育に影響した可能性が考えられた.キュウリをFLまたはML下において異なるPPFD条件で育成し,実生の単位葉面積あたりの総光合成速度を,光合成・クロロフィル蛍光測定システムを用いて測定した.FL照射に順化した葉の最大総光合成速度は,育成時のPPFDにかかわらず,ML、照射光に順化した葉よりも大きかった.R/FR比をFLおよびMLと同じにしたLEDで育成した実生においても同様の傾向が見られた.したがって,FL照射下における光合成能力の向上は,高R/FR比の光照射に起因すると考えられる.光化学系IIの実効量子収率,比葉面積重およびクロロフィル濃度の解析から,FL下での光合成能力の向上には,光質と光強度が複合的に作用した可能性が示された.クロロフィル蛍光パラメータの解析から,FL順化葉は強光下での光障害が緩和されることが示唆され,高R/FR比によって強光耐性が高まる可能性が示された.FL下では,ML下よりも展葉が遅く,同じPPFDで育成しても,FL照射光に順化した葉の形態は陽葉的であり,FL_LおよびML照射光に順化した葉は陰葉的であった.
|
次年度の研究費の使用計画 |
病原体抵抗性に関する試験の準備の都合で,研究補助員の雇用期間および使用する消耗品の必要量に時間的なずれが生じたため次年度に予算を繰り越すことになった.また,25年度中に投稿を予定していた論文のとりまとめが遅れたため,そのための校閲費用,投稿料を次年度に繰り越した.繰り越した研究費はそれらの目的に使用される予定である.
|