研究課題/領域番号 |
24380147
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
豊水 正昭 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (80180199)
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研究分担者 |
高橋 和昭 山形県立米沢女子短期大学, 健康栄養学科, 教授 (80183440)
喜久里 基 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (90613042)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 暑熱ストレス / LPS(Lipopolysaccharide) / ユビキチンプロテアソームタンパク質分解 / オレウロペイン / アナカルド酸 / 炎症応答 / 活性酸素 |
研究概要 |
家禽生産現場において「暑熱と内毒素によるストレス」は代表的重要課題でいずれの場合も生産性は低下する。研究計画2年目にあたる本年度では、1)FeCl3/チオシアン酸塩を用いて潜在的還元力を評価するBAP(biological anti-oxidative potential)テストにより上記ストレスを抑制する生理活性物質候補の選別を行い、さらにこのうち一部の活性物質のストレス緩和効果を2)in vitro細胞試験ならびに3)in vivo実験で検証した。1)BAPテストの結果、典型的抗酸化物質であるCoQ10、アスコルビン酸、Nアセチルシステイン、Cysは極めて高い還元力を示し、オリーブ特有成分オレウロペインはこれら3物質よりもさらに高い抗酸化力を示すことが示された。また、カシューナッツ殻油(CNSL)主成分アナカルド酸も中程度の還元力を示した。Cys以外の主なるアミノ酸ではMet、Lys、Glyの順に還元力が高かったがこれらの値は上記5物質に比べはるかに低く、二糖類トレハロースはほとんど還元力を示さなかった。2)鶏単離肝細胞を用いてアナカルド酸の内毒素ストレス緩和効果を検証した結果、炎症性サイトカイン誘導性の活性酸素過剰産生ならびに脂質過酸化が抑制されることが示され、炎症応答関連遺伝子のmRNA発現量の上昇も抑制されることが示された。3)1)において還元力は認められなかったが、抗酸化成分を保護する作用があることが知られているトレハロースを肉用鶏に給与した結果、慢性暑熱感作時の脂質過酸化は抑制される傾向を示した。以上の結果から、一部の生理活性物質においては、その化学的評価と実際のストレス緩和効果は必ずしも一致しない可能性が示唆され、最終段階において慢性暑熱in vivo試験の重要性が再確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、in vitro実験による生理活性物質の探索が実施され、有力な候補物質が見出された。今後は、この候補物質のin vivoにおける作用を高度に検証する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
メカニズム解析に基づき実践的飼料資材の組み合わせを設計し、in vivo動物実験により高温と内毒素の各ストレスならびに同時ストレスに対する効果を検討した上で、ストレスの実用的軽減を可能とする新たな家禽飼育法を確立する。34℃、5日間暑熱曝露(高温モデル)、あるいはステロイド系ホルモン投与(ストレス誘導モデル)した、3-4週齢の各ストレス負荷ニワトリに、25年度の実験結果に基づき合理的に設計した実践的飼料資材を給与し、実践的ストレス軽減および生産性向上を検証する。なお、各仮説の検討責任者は、「酸化ストレス」、「タンパク質分解」、「免疫」の各応答を統合的に解析して不測の事態への対応案を策定し、最適な実用飼料を考案する。 なお、25年度のスクリーニングの結果から提案される飼料資材では飼料摂取量の改善が期待できなかった場合には、すでに申請者研究分野である程度飼料摂取回復が認められている電解水素水の給水や、飼料添加物としてのトレハロースや焼酎粕を併用することも考え、これまでの改善効果を超える新規飼料配合設計を提示する。 本研究の遂行により、鳥類のストレス特性の完全な解明が一歩前進するとともに、比較環境生理学的観点から生物(動物)の適応機能の理解に大きく貢献する。応用的には、抗酸化・抗炎症物質を活用して「酸化ストレスや免疫応答」のみならず、「タンパク質代謝、とくに分解系」の制御法を斬新に開発する点で意義が大きい。また、本研究の実現は、暑熱や内毒素によるストレス対策の決定打となる可能性があり、日本の畜産業が「生産性を担保する抗ストレス資材」の実践で世界をリードできる可能性すら秘めているといえる。このように安全安心かつ安定的な畜産物生産の達成にむけて大きな一助になるよう、得られた結果を取りまとめ成果の発表を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
試薬、器具の効率的購入と効果的使用状況により、当初計画の研究費よりも支出が抑えられ、わずかに繰越金が生じたため。 次年度の研究において、実験精度を高めるために若干の供試個体数増を考慮し、初生雛の購入増及び試薬の購入に充てたい。
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