研究課題
(1)ブタ脂肪組織中トリアシルグリセロール(TAG)のsn-1にacyl-CoAを結合させるglycerol-3-phosphate acyltransferase (GPAT)およびsn-3にacyl-CoAを結合させるdiacylglycerol acyltransferase (DGAT)のアイソフォームについて脂肪組織、筋肉、肝臓でのmRNA発現量の分析を行った結果、脂肪組織と肝臓の間でアイソフォームの発現量が異なった。(2)マウス脂肪前駆細胞株(3T3-L1)とブタ脂肪前駆細胞株(PSPA)ではTAG合成遺伝子遺伝子アイソフォーム発現の経時的な変化が異なっていた。マウスとブタの脂肪細胞株でみとめられたこの発現様式の違いは、脂肪組織における発現様式と酷似しており、細胞レベルでもブタの特異性を明らかにした。(3)冷蔵保存期間を変えた豚脂肪組織における脂肪の結晶および結晶多形の分布状態をラマン顕微鏡を用いて調べた。その結果、高次構造を形成して系の物性に影響を及ぼしていると考えられているβ’型結晶多形についてはネットワーク状に分布していることを確認し、可視化に成功したと考えられた。(4)脂肪の結晶度と物性の関係については、一定の冷却速度にて異なる冷却終了温度まで冷却した精製ラードについてプランジャを侵入させた場合の圧縮加重を測定する実験系を検討した。その結果、圧縮加重は冷却終了温度により異なった。(5)外観と脂肪の結晶度との関係を明らかにするため、「ヒトが見てわかる違い」を判定するためのパネルを作成した。具体的には、農研機構畜産草地研究所職員を対象にThe Farnsworth D-15 testを実施し、色覚に異常の認められなかった47名をパネリストとして選抜した。
2: おおむね順調に進展している
TAG合成遺伝子に関する検討、脂肪細胞を用いた検討、ラマン分光法を用いた結晶性状検討等についてはほぼ計画通りであり、結晶性状と物性の関係解明についても実験系の確立が進んでいることから、全体としてはおおむね順調に進展している。
全体として方針を変更することなく、TAG合成遺伝子に関する検討、脂肪細胞を用いた検討、ラマン分光法を用いた結晶性状に関する検討、および結晶性状と物性の関係解明についてそれぞれ研究を実施する。最終年度であることから、生体→TAG分子種組成→結晶性状→物性というストーリーでの品質制御に向けた展望が示されるように結果をとりまとめる。
研究に係る経費の節約等を行った結果、次年度使用額が生じた。次年度請求額と併せて、より研究を効果的に推進するため契約職員の人件費等に充当する。
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