研究課題/領域番号 |
24380150
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
麻生 久 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (50241625)
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研究分担者 |
渡邊 康一 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (80261494)
北澤 春樹 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (10204885)
岡田 夏美 東北大学, (連合)農学研究科(研究院), 技術一般職員 (10621584)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | プリオン / M細胞 / アルドラーゼA / 牛腸管上皮細胞株 / プロテオーム解析 / 輸送小胞 / 侵入 / 組織解析 |
研究概要 |
本研究は、経口摂取プリオン蛋白の腸管M細胞を介した侵入機構と神経細胞への伝播機構の解明を目的する。 今年度は、細胞株およびウシ小腸組織を用いて、プリオン蛋白に親和性を有する解糖系酵素アルドラーゼA蛋白の発現様式を解析した。ウシ腸管上皮細胞株(BIE細胞)のin vitro M細胞分化誘導系では、増殖期に比べM細胞分化誘導後において発現が増加し、細胞の丁端部に局在することが判明した。マウス神経細胞株(N2aC4細胞)およびプリオン持続感染神経細胞株(N2aC24 L1-3細胞)は共にアルドラーゼAを発現していたが、異常プリオン蛋白が感染することにより、その発現量は低下することが判明した。プリオン持続感染神経細胞株(N2aC24 L1-3細胞)では、異常プリオン蛋白とアルドラーゼAが小胞内に共染色された、加えて、抗アルドラーゼ抗体での免疫沈降によって異常プリオン蛋白が共沈されることが判明し、異常プリオン蛋白とアルドラーゼAは細胞内で挙動が一致していることが示唆された。 アルドラーゼAはウシ小腸の盃細胞ムチン小胞内に存在し、絨毛部吸収上皮の微絨毛も染色された。さらに、アルドラーゼAは盃細胞内の分泌小胞およびムチン小胞内に存在して分泌され、分泌されたアルドラーゼAが絨毛部吸収上皮の微絨毛に吸着していることが免疫電顕によって確認された。小腸パイエル板濾胞随伴上皮では、サイトケラチン18陽性のM細胞で管腔側丁端部に特異的に染色されることを発見した。加えて、免疫電顕により、M細胞内輸送小胞内および分泌小胞内にアルドラーゼAの存在を証明することができ、アルドラーゼAがM細胞の新たなマーカーと成り得ることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
培養細胞において確認されたアルドラーゼAは、ウシ腸管上皮において経口接種したプリオン蛋白を取り込み、生体内に侵入させると考えられているM細胞に特異的に発現していることを免疫電顕により証明することができた。また、吸収上皮の微絨毛に存在するアルドラーゼAが盃細胞により分泌されることが判明した。この実験結果は、小腸におけるアルドラーゼAが存在様式を明らかした内容であり、今後の研究進展を保証するものとなった。
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今後の研究の推進方策 |
M細胞のプリオン蛋白取り込み阻害実験 ウシ腸管上皮細胞株(BIE細胞)のin vitro M細胞分化誘導系を用いて、M細胞に分化したBIE細胞の上部培養液中に異状プリオン蛋白を加え、一定時間後取り込まれて下部培養液中にトランスサイトーシスされた異状プリオン蛋白を、プリオン感染が可能なマウス神経細胞株(N2aC4細胞)に添加培養し、感染増幅した異状プリオン蛋白を検出する。また、アルドラーゼAに対する抗体を上部培養液中に加え、トランスサイトーシスに及ぼす影響の解析を行う。次に、アルドラーゼA蛋白に対するsiRNA蛋白発現干渉抑制のベクターをBIE細胞に感染させて発現抑制細胞株を作出し、M細胞分化能の確認と異状プリオン蛋白のトランスサイトーシスへの影響を解析する。
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