研究課題/領域番号 |
24380151
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
吉澤 緑 宇都宮大学, 農学部, 教授 (60114162)
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研究分担者 |
福井 えみ子 宇都宮大学, 農学部, 准教授 (20208341)
松本 浩道 宇都宮大学, 農学部, 准教授 (70241552)
長尾 慶和 宇都宮大学, 農学部, 教授 (70291953)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ウシ / 遺伝子 / 育種 / 繁殖 / 生殖工学 |
研究概要 |
栃木県畜産酪農研究センターのホルスタイン種経産雌牛80頭の血液および未経産雌40頭、10頭の雄の購入凍結精液を用いて、遺伝子多型解析を増体関連ではGH、乳脂率ではDGAT1、ホルモン感受性ではGRIA1、乳房炎ではBoLA遺伝子について行った。遺伝子型のデザイン胚作出のために、供試雌牛としてGH:L、DGAT1:K、GRIA1:S、BoLA:1401型、精液ではGH:L、DGAT1:K型の対立遺伝子を持つものを用いて、ホルモン処理した雌牛へ人工授精して体内受精卵を得た。7日目に胚を潅流し得られた胚は9個であり、バイオプシーにより性判別後5個の雌胚を修復培養し5頭の受胚雌牛へ移植したが、妊娠に至らなかった。また新たな候補遺伝子として検索したBreast cancer 1(BRCA1)はDNA修復やゲノムの安定性、アポトーシスの誘導に関与する機能タンパク質であり、当研究室でマウス胚盤胞において着床に関与していることを明らかにしている。牛のBRCA1遺伝子は、ヘレフォード種で塩基配列が報告されているのみであり、その機能や受胎への関与は不明である。そこで牛胚盤胞におけるBRCA1タンパク質と遺伝子の発現の有無、遺伝子機能ドメインの多型解析を行った。牛BRCA1タンパク質と遺伝子の発現解析には、家畜改良事業団で体外生産された胚盤胞を用い、タンパク質の発現解析には免疫染色法、遺伝子の発現解析にはReal-time PCR法を用いた。牛BRCA1タンパク質は、胚盤胞で発現し細胞の核に局在していた。また遺伝子の発現が認められた。また同センターの経産雌牛30頭、リピートブリーダー4頭によりBRCA1遺伝子のエクソン11の多型を解析したところ、1同義置換が認められたが、核内移行シグナルと関連する塩基置換部位ではなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
遺伝子の委託分析については分析サンプル数が1回に192件必要とのことであり、少ないと1件当たりの分析に要する経費が高額となることもあり、本年の対象雌サンプル数が少なかったことから、翌年に繰り越してきた。本年は栃木県畜産酪農研究センターの雌牛が更新される予定であり新たな未経産雌牛のサンプル採取も期待できる。また遺伝子をデザインして作出した胚をバイオプシーして性判別後に新鮮胚移植を行ったが、受胎例は得られなかった。これらのことから計画よりやや遅れていると判断され、結果を検証して、遺伝子構成既知子牛の効率的生産の成功を図りたい。なお顕微授精法の検討も行っている。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度行った体外作出された胚のバイオプシーによる性判別では、形態的に良好な胚であったにもかかわらず受胎しなかった。これはバイオプシーのダメージが大きい可能性があることから、本年度は遺伝子多型分析済みの性判別精液を使い雌胚を作出することを計画している。作出した胚は新鮮胚移植で子牛生産へ繋げたい。 1)遺伝子情報既知雌牛からの生体内卵子と解析済の精子を用いた胚の体外作出。昨年度と同様に、遺伝子構成既知胚を体外受精により作出する。 2)作出胚の受胚雌牛への移植と誕生した子牛の評価。昨年同様に、受胚雌牛へ作出・評価された胚の移植を行う。遺伝子構成既知子牛を誕生させて、その子牛の遺伝子解析による評価を行う。 3)得られた研究成果の社会への報告 学会での講演、論文の発表や新聞報道により、研究成果を社会へ公表する。
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次年度の研究費の使用計画 |
栃木県畜産酪農研究センターの協力で、飼養されているホルスタイン種雌牛120頭のサンプルで111頭の遺伝子型解析を行った(GRIA1,GDAT1,GH)。さらに遺伝子多型分析用の雌牛の血液サンプルを収集し、外部へ委託して解析をする予定であったが、センターの雌牛の入れ替えが行われており、新たな雌牛の遺伝子解析を行う必要が出ており、これに対応した実験を組むことが必要であった。また、受託件数が1回に192件とのことで、サンプルが揃わないと1件当たりが割高となってしまうことから、十分な数のサンプルを収集して解析を依頼することにしたため、次年度に繰り越しとなった。 栃木県畜産酪農研究センターではホルスタイン種雌牛の入れ替えが始まっており、本年度はさらに入れ替えとなる未経産の対象雌牛の遺伝子多型を明らかにする。CNV解析には192サンプルを収集して委託する。これらの結果よりOPU,AIなどの実験に用いる対象雌牛を絞る。 また、雄牛(主要な凍結精液)8頭の遺伝子型(ホルモン感受性関連遺伝子:GRIA1)を調べ、ホモの個体トレジャー:No.JP5H53241SX)を同定した。この精液は雌雄産み分け用選別精液として販売されていることから、雌子牛生産にこれを利用することを計画している。
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