研究実績の概要 |
栃木県畜産酪農研究センターのホルスタイン種雌牛個体の全ゲノムの一塩基多型(SNP)解析およびコピー数多型(CNV)解析を用いて欠損や重複を網羅的に調査した。その結果と乳量や乳脂率との比較解析が可能か否かを検討した。90頭の血液から抽出したDNAの全ゲノムSNPおよびCNV解析は、Illumina社のBovineLD Genotype BeadChip (v1.1)またはBovineSNP50K(v2)で行い、GenomeStudio v2011.1 を用いて処理した。またSNP解析結果と乳量および乳脂率データを用いて、解析ソフトウエアSNP & Variation Suite 2015 (Golden Helix社)によりGenotype Association TestおよびHaplotype Trend Regressionを行い、SNPと乳量、乳脂率の相関のある染色体の位置を絞り込み、NCBIのBov Mapから当該染色体に位置する遺伝子の同定を試みた。CNV解析では、3個体で多型が、そのうち2個体では、第5番染色体のテロメア末端側の欠損(約332000塩基)、第12番染色体のテロメア末端側の欠損(約1444000塩基)が各々認められ、1個体では第12番染色体の欠損があったが、遺伝子部位を同定できなかった。53頭のSNP情報と乳量および乳脂率データを比較解析したところ、平均乳量(305日)は約10,400kg、平均乳脂率は約4%で家畜改良増殖目標値と比較して高い値を示した。SNP結果の照合で、乳量では第1番染色体にピークが認められたが、ここに位置する遺伝子は、DPPA3-4,Sox, ASIP,MC1R等であり、乳脂率では第21番染色体にピークが認められたが、ここに位置する遺伝子はTM6SF1、FAM等であり、乳量および乳脂率に直接関連のある遺伝子を同定できなかった。
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