研究課題/領域番号 |
24380152
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
伯野 史彦 東京大学, 農学生命科学研究科, 助教 (30282700)
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研究分担者 |
伊藤 昭博 独立行政法人理化学研究所, 吉田化学遺伝学研究室, 専任研究員 (40391859)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 糖尿病 / インスリン抵抗性 / ジアシルグリセロールキナーゼζ / 低分子化合物 / 高糖尿病薬 |
研究実績の概要 |
これまで我々は、DGKζの発現抑制実験や過剰発現実験から、DGKζがIRS-1と相互作用することによって古典的インスリンシグナルとは独立にGLUT4の細胞膜移行を制御していること、IRS1と結合したDGKζがインスリンシグナルとは独立し、GLUT4の細胞膜移行を阻害していることを明らかにしてきた。そこで本研究では、DGKζがGLUT4の細胞膜移行を制御する分子メカニズムを解明し、さらに、DGKζとIRS1の結合を調節することによって糖尿病の一因であるインスリン抵抗性を解除する薬剤を単離することを目的としている。本年度は、DGKζの結合タンパク質であるPIP5K1αもまたGLUT4の細胞膜移行を正に制御していることを新たに発見した。続いて、DGKζとIRS1の結合を阻害する低分子化合物の機能解析を行った。GST-IRS1とFLAG-DGKζの結合をプレートで検出するキットを作製し、添加によってこの結合が阻害される低分子化合物をスクリーニングした。このスクリーニングによって単離された20種類の化合物のうちのいくつかが、TNF-α処理によって誘導されるGLUT4の細胞膜移行および糖取り込みの抑制を解除することが明らかとなった。その時のインスリンシグナルを解析したところ、TNF-α処理によって抑制されたインスリンシグナルも回復していることがわかった。我々はこれとは独立し、IRS1と結合するGKAP42がIRS-1のチロシンリン酸化の維持に必要であることを示している。そのため、低分子化合物によるインスリンシグナルの回復には、新規IRS1結合タンパク質GKAP42が関与していると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
この研究の目的はIRS1とDGKζの結合を制御することによりインスリン抵抗性を解除する抗糖尿病薬の開発である。我々は、新たにIRS-1とDGKζの結合を阻害するような低分子化合物を単離し、その一つがインスリン抵抗性を解除することを発見した。さらに、この低分子化合物はDGKζばかりでなく、GKAP42の結合も制御していると考えられ、予想しなかった新たな発見をすることができた。また、DGKζによるGLUT4の細胞膜移行の制御はDGKζ結合タンパク質であるPIP5K1αを介していることを明らかにした。このように当初の計画以上に研究が進展している。
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今後の研究の推進方策 |
上記のようにDGKζとIRSの結合阻害低分子化合物がTNF-α誘導性インスリン抵抗性を解除することを明らかにした。また、DGKζがPIP5K1αの活性を制御してGLUT4の細胞膜移行を制御していることも示している。そこで、今後は、単離した低分子化合物がPIP5K1αの活性に及ぼす影響について解析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
これまでの研究成果により、DGKζばかりでなくDGKζと結合するPIP5K1αも糖取り込みに必須な役割を果たしていること、DGKζとIRS1の結合阻害は、DGKζの活性ではなく、PIP5K1αの活性を促進して、糖取り込みを誘導していることを新たに発見した。そのため、DGKζとIRS1の結合阻害低分子化合物が、PIP5K1αの活性を制御する機構を解明する必要性が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
3T3-L1脂肪細胞やインスリン抵抗性モデルラットにDGKζとIRS-1の結合阻害低分子化合物を添加し、PIP5K1α活性を測定する。
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