平成27年度は以下の2課題に関して研究を遂行した。 1.黄体内局所調節因子としてのテストステロンの意義 ウシ血中のテストステロン濃度が黄体退行時に上昇することが知られており、本研究ではこのテストステロンが黄体の退行 (=消失) に関与するという仮説を立てた。機能的黄体 (排卵後 8-12 日) および退行中の黄体 (排卵後 15-17 日) から黄体細胞を単離し、プロジェステロン分泌能および細胞生存率に及ぼすテストステロンの影響を検討したところ、退行中の黄体から単離した細胞の細胞生存率だけがテストステロン添加により減少した。以上の結果から、テストステロンは黄体細胞の細胞死を介した構造的退行に関与する可能性が考えられる。 2.ウシ黄体における糖鎖の役割 galectin-1 は、細胞膜上の糖鎖に結合することで黄体細胞機能を維持することが報告されている。このgalectin-1 の糖鎖への結合は、糖鎖にシアル酸が付加することで阻害されることが知られており、本研究では退行時黄体のシアル酸量の変化に着目した。黄体細胞中のシアル酸量は機能的黄体由来細胞と比べ退行中の黄体由来細胞において多いことが明らかとなった。また機能的黄体由来細胞においてのみ認められた galectin-1 添加による細胞生存率上昇が、シアル酸を分解することによって退行中の黄体由来細胞においても認められた。これらの結果から、退行中の黄体においてシアル酸量が増加することが、galectin-1 の糖鎖への結合を阻害し、黄体細胞を死へと導くことが示唆された。
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