研究課題
精子発生チェックポイントは細胞品質管理機構である。MRLマウスは自己免疫疾患および精子減少症モデルとして知られる。本研究の目的は、精子発生チェックポイントと自己免疫疾患発症の関連について明らかにすることである。研究を続行するうち、昨年度に完成したコンジェニックマウス(B6.MRLc1)において、自己免疫疾患が精子発生だけではなく全身性に発症していることを発見した。そこで、自己免疫疾患と不妊症発症とが間接的に関連している可能性を探るため、膵臓に着目して研究を続けた。今年度は、精子発生チェックポイントに異常を示すB6.MRLc1ならびに各種近交系マウスを用いて、自己免疫性慢性膵炎の発症を検討した。マウス膵臓には単核細胞浸潤像が認められ、細胞浸潤の出現頻度と面積の組織計測値はいずれもA/J、AKR/N、B6、MRL、B6.MRLc1で高く、DBA/1J、DBA/2では中程度で、BALB/c、C3H/Heでは細胞浸潤が稀であった。さらに各系統の両計測値は雌で雄よりも高値を示した。B6、MRL、B6.MRLc1を精査したところ、浸潤細胞は導管と血管周囲に認められ、MRLとB6.MRLc1では腺房細胞間への浸潤像も観察された。浸潤細胞は主にT細胞とB細胞で、一部細胞増殖マーカーPCNAに陽性を示した。細胞浸潤の出現頻度と面積は6ヵ月齢以降加齢性に増加・拡大傾向にあり、MRLとB6.MRLc1の浸潤面積はB6よりも有意に大きかった。B6.MRLc1の血中dsDNA抗体とLIPの濃度はB6よりも有意に高値だった。加齢性に出現するマウス膵臓への細胞浸潤は遺伝学的背景に左右され、特にMRL型1番染色体テロメア領域はB6の自己抗体濃度を高めると共に、膵臓への細胞浸潤様式を変化させ、浸潤巣の拡大や膵機能悪化といったMRL様の病態を導くと考えられた。
2: おおむね順調に進展している
精子減少症の原因遺伝子座を固定したコンジェニックマウスを作出し、自己免疫性腎臓病に引き続き慢性膵炎の発症が確認されたことは、今年度の目的を達成できたと評価した。
雄の不妊症は、精巣における血液精巣関門(BTB)の異常と密接に関連することから、BTB機能の解明を目指す。そのためにBTB構成蛋白の局在ならびにビタミンA欠乏による不妊症モデルの解析を行う。
平成25年度では、補助金は計画通り支出したが、助成基金助成金に関しては372,658円を平成26年度に繰り越した。うち約29万円は、大学の会計システムが新規導入されたことに伴い自動的に事務処置遅延が生じたもので、平成26年度のシステム上に計上されている。約8万円は、最終年度である平成26年度に研究用抗体1点を新たに購入する目的で残した。上記に示す通り、最終年度において細胞死シグナルを検出する抗体1点を購入する予定である。
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