研究課題
基盤研究(B)
本研究は、高泌乳牛において飢餓状態と繁殖率の低下を引き起こす栄養シグナルがケトン体(負のエネルギーシグナル)であることを明らかするため、遺伝子改変マウスモデルを用いて、生殖機能を制御するケトン体センシング機構が、上衣細胞に存在すること、またセンシングの細胞内メカニズムを明らかにすることを目的とする。ケトン体輸送担体の上衣細胞特異的なコンディショナルノックアウトマウスを用いてケトン体センサーが後脳の上衣細胞であることを証明するとともに、上衣細胞特異的に蛍光タンパクを発現するトランスジェニックマウスを作製し、in vitroでケトン体センシングの細胞内メカニズムを明らかにする。これにより、重篤なケトーシスによる繁殖障害が頻発する高泌乳牛における性腺機能抑制予防や治療への基礎的知見を提供する。ケトン体の脳内センシングメカニズムにおいて、ケトン体の輸送担体MCT1が重要であることを糖尿病ケトーシスモデルで明らかにしている。よって本研究では、hFOXJ1-CreERT2マウスおよびMCT1-floxedマウスを作製し、これらの交配によりコンディショナルなMCT1ノックアウトマウスを得るため、トランスジェニック動物作製及びノックイン動物作製のためのDNAコンストラクトの作製を行う。後脳上衣細胞から視床下部への情報伝達経路を明らかにするため、第4脳室にwheat-germ agglutininを投与し、延髄カテコールアミン神経細胞と視床下部室傍核神経細胞にその存在が確認する。このことから、後脳上衣細胞は延髄から視床下部へ何らかの投射をしていることを証明する。
3: やや遅れている
上衣細胞にGFPを発現する遺伝子改変マウスは現在ライン化しているが、一部の上衣細胞にしかGFPを発現せず、よりよいプロモーターを見つける必要がある。MCT-1のfloxedマウスを作製するためのコンストラクトはほぼ完成したが、ES細胞への導入が遅れている。トレーサーを用いた上衣細胞からの伝達経路の特定に関してはほぼ予定通り進行している。
上衣細胞にGFPを発現するためのプロモーターは、foxj1などのより特異的なプロモーターを用いて実施する。ES細胞へのコンストラクト導入については次年度も引き続き行い、早期にキメラ動物を得るよう最善を尽くす。トレーサー実験は必要な動物数を得て、論文作成を開始する。
次年度は、GFP導入マウス及びfloxedマウスの両者のライン化が本格的に開始されるので、動物の飼養管理に相当の財源が必要となる。基金及び補助金の両方を効果的に使用して、動物モデルの作製を早期に完成させ、生理的な実験を開始する予定である。
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Proceeding of the National Academy of Sciences of the United States of America
doi:10.1073/pnas.1114245109.
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