研究課題/領域番号 |
24380158
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
今村 拓也 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90390682)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 進化 / エピゲノム / ノンコーディング / 霊長類 / 生物多様性 / 非コードRNA / DNAメチル化 / 次世代シーケンサー |
研究概要 |
本課題では、脳の動物種間多様性成立機構を解き明かすため、非タンパク質コードRNA(ncRNA)獲得と機能化が近傍遺伝子の発現スイッチを多様化しうる、という独自の発見の普遍性を検証していく。 昨年度は、ncRNA発現を指標とした多様なシスエレメント情報の網羅化、に大きな進展があったが、本年度は、その網羅的データから得られた新規の組織特異的プロモーターncRNA(pancRNA)によるエピジェネティック変換解析に大きな進展があった。解析したいずれの遺伝子座においても、pancRNAは直下の遺伝子の活性化に寄与しており、このうち種特異的pancRNAノックダウンについても、直下の組織特異特異的遺伝子発現減少/表現型改変が起こっていた。例えば、SH3 domain-containing RING finger protein 3(SH3RF3)遺伝子については、マウス特異的にpancRNAが存在しており、霊長類にはpancRNAが存在しない。それでもマウス大脳皮質ニューロンにおいて直下の遺伝子活性化に寄与していたことから、pancRNAを介した共通原理の下で、動物種毎に異なる遺伝子スイッチ修飾が種特異的に生み出されていることが示唆された。以上の成果の一部については、BMC Genomics誌に1月に出版報告した。 種特異的pancRNAによるエピジェネティック変換が確かに細胞の構成に表現型を生み出すのかについて、現在、10程度のpancRNAのノックダウンの効果をマウス胎児神経幹細胞初代培養系にて検定しており、例えば上記のSH3RF3遺伝子の場合、細胞増殖の抑制によりニューロンの数が減少することを認めている。このように、ncRNA獲得と機能化が近傍遺伝子の発現スイッチを種特異的に適応させた効果について、更に例を増やすことで評価して行く。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本課題は、[1]DNA脱メチル化における共通原理の推定、[2]RNA発現を指標とした多様なシスエレメント情報の網羅化、[3]遺伝子操作技術を活用した脳の多様化の実現、の3本柱で成り立っており、このうち、昨年度に項目[2]が大きく進展したことにより、本年度は項目[3]に集中できたため。
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今後の研究の推進方策 |
[1]DNA脱メチル化における共通原理の推定、[2]RNA発現を指標とした多様なシスエレメント情報の網羅化、[3]遺伝子操作技術を活用した脳の多様化の実現、のうち、今年度までに項目[2][3]で得られた情報をもとに、項目[1]の研究と個体でのncRNA機能研究を効率よく推進する。
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次年度の研究費の使用計画 |
初代培養を用いた表現型解析が予定以上に進行したため、効率化のため、この項目を本年度に前倒して遂行した。その分、経費のよりかかるin vivoの解析の一部を来年度にまわしたため、差額が生じた。 次年度使用額について、in vivoの解析の一部を確実かつ効率的に実行するために使用する。
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