研究課題
本課題では、脳の動物種間多様性成立機構を解き明かすため、非タンパク質コードRNA(ncRNA)獲得と機能化が近傍遺伝子の発現スイッチを多様化しうる、という独自の発見の普遍性を検証した。昨年度までに、pancRNAと命名した遺伝子プロモーター近傍から発現するncRNAの新種を1000以上発見し、遺伝子活性化に働くこと及びその配列上の特徴を示し、うち複数の種特異的pancRNAについて機能解析を進めてきていた。今年度は、pancRNA発現の種間多様性を調べるために、哺乳類5種(チンパンジー・マカクザル・マーモセット・マウス・ラット)の5組織を用いた比較トランスクリプトーム解析を実施し、格段に包括度を増すことによる種特異的pancRNAの特徴の抽出と機能性検定を行った。その結果、pancRNAは発現プロファイルと塩基配列の点で種間多様性が高いということ、及び、数百の生物種特異的pancRNAが確かに存在していることを証明した。また、マウス大脳皮質特異的発現を示すpancRNAの機能解析から、実際に種特異的pancRNAが遺伝子発現制御に寄与し、表現型発現に結びついていることを示した。例えば、大脳においてげっ歯類にのみ認めたSh3rf3とVwa5b2遺伝子のpancRNA(pancSh3rf3、pancVwa5b2)については、pancSh3rf3が神経幹細胞におけるニューロン分化の促進に寄与すること、反対にpancVwa5b2が神経幹細胞におけるニューロン分化の抑制し、またアストロサイト分化の促進にも関与していること、を発見した。以上より、種特異的なpancRNAレパートリーが存在し、それらが哺乳類生物種間で共通の遺伝子発現活性化機構を駆動することで、種特異的な遺伝子発現制御ネットワークを作り出している、という種間多様性発現機構が進化の過程で機能してきたことを提唱する。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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