ウマヘルペスウイルス1型(EHV-1)レセプターであるウマMHCクラスⅠ分子をEHV-1標的細胞に強発現するトランスジェニックマウス(Tgマウス)を作製し、新たなEHV-1感染モデルとして確立する目的で、平成27年度は以下の実験を行った。 ユビキタスなプロモーターを有する遺伝子発現ユニットCAG-A68-B2Mを導入したTgマウス(A68-B2Mマウス)のうち、ウェスタンブロット法にて肝臓、脾臓、肺、脳に導入遺伝子産物(MHCクラスI蛋白)の発現が確認された1ラインを実験に使用した。EHV-1を経鼻感染させ、病理組織学的解析を行ったところ、Tgマウス、野生型マウス(WTマウス)ともに肺において気管支間質性肺炎がみられ、TgマウスではWTマウスと比較して病変がより重度であった。さらに、Tgマウスでは、WTマウスと比較して肺組織中により多数のウイルス感染細胞が認められた。これらの結果は、外来性に導入したウマMHCクラスIがマウスのEHV-1感受性の増強に関与していることを示唆するものである。一方で、Tgマウス、WTマウスともに、肺以外の臓器では病変が認められなかった。 CAGプロモーターとウマMHCクラスI cDNAの間にloxP-Stop-loxP配列を有するCAG-loxP-Stop-loxP-A68-B2M ユニットが導入されたTgマウス(LSL-A68-B2Mマウス)の1ラインと、T細胞特異的にCreリコンビナーゼを発現するLck-Creマウスを交配し、得られた産仔(Lck/A68-B2Mマウス)の全身臓器をウェスタンブロット法で解析したところ、胸腺特異的にMHCクラスI蛋白の発現が確認された。EHV-1持続感染Tgマウスからのウイルス再活性化については至適条件を現在検討中である。
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