研究課題/領域番号 |
24380163
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
片倉 賢 北海道大学, (連合)獣医学研究科, 教授 (10130155)
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研究分担者 |
加藤 大智 北海道大学, (連合)獣医学研究科, 准教授 (00346579)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 感染症 / 獣医学 / 寄生虫 / 犬 / 内臓リーシュマニア症 / 免疫 / 制御性T細胞 / 病態 |
研究概要 |
内臓リーシュマニア症は人獣共通原虫性疾患であり、犬は保虫終宿主として重要な役割を果たしている。本研究は、アジア・アフリカでの主要原虫種であるLeishmania donovaniによる自然感染例と実験感染例の急性期と慢性期における免疫応答と病理学的変化を明らかにすることを目的として、(1)バングラデシュにおける犬のリーシュマニア自然感染例の疫学と病態(2)実験的犬リーシュマニア症の病態と制御性T細胞(Treg)の役割(3)原虫が内臓から全身、とくに皮膚や腎臓に播種する機構について解析する。 平成25年度は、犬を用いた感染実験をわが国で初めて実施した。すなわち、P2レベルの感染動物施設内でビーグル犬3頭にL. donovaniを静脈内接種し、経時的採材と経過観察を行った。超音波診断装置のガイド下で肝臓の生検材料を経時的に採材したが、脾臓は小さいため生検による採材はできなかった。感染後3ヶ月が経過したが、血液と肝臓から原虫DNAはreal time PCR法では検出されなかった。血液換検査においては、貧血や血小板減少が認められず、血液の生化学的性状にもとくに異常は認められなかった。また、末梢血T細胞のサブポピュレーションについてフローサイトメトリーによるCD4、CD8、CD25、FoxP3の陽性細胞の解析を行ったが、著しい変化は認められなかった。これらの結果から、今回の感染実験では急性期症状は起こらなかったものと考えられた。今後も経過観察と免疫学的解析を継続する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
飼育施設のハード面と実験計画書のソフト面の難関をクリアして、犬を用いたLeishmania donovani感染実験をわが国で初めて実施するに至った。P2レベルの感染動物施設内でビーグル犬に原虫を静脈内接種し、経時的採材と経過観察を行っている。急性期症状は発現せず、免疫学的変化はいまのところ観察されていない。
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今後の研究の推進方策 |
自然感染の犬リーシュマニア症の症状は様々であるが、その理由として、免疫応答の関与が示唆されている。しかし、実験感染に関する知見は少ないため、本研究の意義は大きい。本感染実験では、現在までは不顕性であるが、今後、顕在化するかを見極めるために、さらに長期の経過観察が必要であり、感染犬の飼育管理と採材、データ解析を継続する。また、原虫が分泌するナノ粒子であるexosomeが宿主の免疫応答を惹起することが報告されている。そこで、L. donovaniが分泌するexosomeに含まれる蛋白質やRNAの解析に着手する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は技術補助員の採用が約半年間のみであったことなどから次年度使用額が生じた。 平成26年度は新たに技術補助員を4月から採用することができたので、その人件費にあてる。
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