2009年に我々は豚回虫As16遺伝子導入コメの経口接種により、マウスにおいて豚回虫感染防御効果があることを報告した(Matsumotoら2009)。しかしながら、開発当時に54μg/g程度あった組換え蛋白含量は、その後の大規模栽培時に、10分の1以下となり、効率的免疫実験ができなかった。小麦胚芽発現系により、豚回虫コドンを穀類型とした際に、16時間の反応で蛋白産生量が約2倍となる結果を得た。以上の理由から、コドン最適化したニューカッスル病ウイルスFおよびHN遺伝子を合成し、利用することで、より高発現の期待される組換え作物を作出するため研究期間を延長した。コドン最適化したニューカッスル病ウイルスFおよびHN遺伝子の設計および合成は完了したが、それらを導入した組換え植物の作成終了には至らなかった。また、同時にFおよびHN蛋白全長発現の困難さから、ピンポイントでニューカッスル病ウイルス感染防御を可能とするペプチド領域HR1およびHR2を標的とし、植物に導入することを計画した。鶏において、HR1蛋白の免疫により、in vitro にてニューカッスル病ウイルス感染を抑制する中和抗体を誘導できることを示した。しかし、抗原が30アミノ酸程度と小さく、蛋白の免疫効果が低いため、各ペプチドをタンデムに連結させることで免疫原性の増強を図り、HR1を3回、HR2を5回連結した遺伝子をそれぞれ作成し、pCOLD ベクターに組込み、大腸菌により蛋白を産生し、マウスに免疫した。わずかではあったが、繰り返しのない蛋白で免疫したマウスより、繰り返しのある蛋白で免疫したマウスの方が抗体誘導効果が高かった。
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