研究概要 |
本研究の目的はウマヘルペスウイルス1型(EHV-1)の神経病原性発現機構を分子レベルで明らかにすることである.ウマヘルペスウイルス1型はこれまで呼吸器疾患および流産の原因ウイルスとして知られ,これらは届出伝染病に指定されている.欧米ではウマヘルペスウイルス1型による神経疾患(ウマヘルペスウイルス髄膜脳症:EHM)の発生が相次いでおり,大きな問題となっている.本研究ではEHMの予防,治療,制御方法を確立する基盤を得るため,EHV-1の神経病原性発現機構をウイルスタンパク質および宿主因子との相互作用の視点から解明する.本年度は研究の基盤となる2株のEHV-1(90c16および01c1)のゲノム塩基配列の再確認を行った.その結果,当初と異なり,両株の相違はORF24, ORF30, ORF65, ORF68およびORF71に存在し,このうち,ORF24およびORF71は繰り返し領域の相違,ORF68は塩基の欠失によるフレームシフトならびに数アミノ酸の相違,ORF30およびORF65はそれぞれ1アミノ酸の相違であることがわかった.ウイルス感染細胞からmRNAを抽出し転写動態解析を行った.今年度はORF10および11の転写開始点を調べた.この二つの遺伝子がポリA付加シグナルを共有するが,それぞれに固有の転写開始点から転写されることがわかった.今年度の成果として,対象としているEHV-1株2株の差異が予想以上に非常に小さいが,病原性は大きく異なることから,アミノ酸レベルで病原性発現が決定されていることが示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実験開始にあたり,対象ウイルスのゲノム塩基配列を再確認したところ,当初の塩基配列は必ずしも性格ではないことが判明し,対象とする遺伝子の再検討を行ったため,計画に遅れが生じた.
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