本研究では、伴侶動物臨床でよく遭遇する肥満細胞腫が生き残る理由を、ストレス応答や細胞内代謝から分子生物学的に解析した。マウスの肥満細胞を低酸素環境で培養すると血管新生誘導因子の産生が亢進した。また培養中に酸素濃度を変化させると脱顆粒が誘導された。イヌの肥満細胞腫から樹立した様々な細胞株を用いて検証すると、血管新生因子の産生に加えて、ピルビン酸キナーゼ活性が亢進することから、解糖系の活性化が示唆された。また腫瘍性の肥満細胞では小胞体ストレス応答が亢進していた。以上の結果から、腫瘍性の肥満細胞では、低酸素応答性や細胞内代謝を亢進して急速な増殖に伴う劣悪な微小環境に対応していることが明らかとなった。
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