研究課題
本研究は、ヒトと共通の疾病が自然発症するイヌに着眼し、ヒト再生医療の実用化を円滑に進め得るトランスレーショナルリサーチの一つとして、イヌ胚性幹細胞(ES細胞)および人工多能性幹細胞(iPS細胞)の血液系再生医療に向けた応用的基盤技術の開発を目的としている。本研究年度では、成犬皮膚線維芽細胞からのiPS細胞株の樹立について検討した。また細胞の継代法についてネコiPS細胞のそれと比較検討した。さらに、分化誘導実験の一環として、昨年度に作製したイヌ胎子線維芽細胞由来iPS細胞から神経細胞への分化誘導方法についても検討し、以下の結果を得た。1.成犬皮膚線維芽細胞にレンチウイルスを用いてヒト由来の4つの多能性関連転写遺伝子(OCT3/4、 SOX2、KLF4およびC-MYC)を導入し、iPS様細胞コロニーを得た。本コロニーはマウスiPS細胞と同様のドーム型を示し、塩基性線維芽細胞増殖因子およびウシ胎子血清(FBS)を加えたES細胞培地で24継代まで維持できたが、一方、白血病阻害因子(LIF)およびFBS添加培地では2継代までで死滅した。2.ネコ胎子線維芽細胞にレトロウイルスを用いてマウス由来の上記4つの転写因子を導入し、iPS様細胞コロニーを得た。本コロニーはヒトiPS細胞と同様の扁平型を示し、LIFおよびFBS添加培地で45継代まで維持できた。樹立した細胞株は、未分化マーカー(ALP、SSEA-4、TRA-1-60、TRA-1-81、Nanog)の発現があり、外胚葉、中胚葉、および内胚葉の各マーカーの免疫染色に陽性を示す細胞へ分化することも確認された。3.イヌiPS細胞を神経誘導培地で培養することで神経幹細胞マーカーであるNestinに陽性を示す細胞を得た。本細胞は各神経系細胞誘導培地で培養することにより、幼若神経細胞、アストロサイト、およびオリゴデンドロサイトの各マーカーの免疫染色に陽性を示す細胞へ分化可能な神経幹細胞の特性を有していた。
3: やや遅れている
今年度に予定していた①細胞の凍結保存法、②新規のリプログラミング誘導系を用いるiPS細胞の作製、および③臨床応用の検討には至らず、来年度から行うこととなったため。
今年度に引き続いて、①細胞の長期継代培養法および凍結保存法の確立、②piggyBacおよびドキシサイクリンを用いたリプログラミング誘導系によるiPS細胞の安定的樹立と細胞分化制御、③イヌ固有の幹細胞成長因子、顆粒球コロニー刺激因子などの特異的サイトカインを用いて、イヌES細胞・iPS細胞から血小板および顆粒球等の血液系細胞へ効率的に分化誘導する技術の開発、および④iPS細胞の臨床応用を目指す。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件) 学会発表 (9件) 備考 (1件)
Veterinary Surgery
巻: 43 ページ: 289-293
10.1111/j.1532-950X.2014.12144.x
Journal of Reproduction and Development
巻: 22 ページ: 196-204
10.1262/jrd.2012-156
Stem Cells and Development
巻: 22 ページ: 2026-2035
10.1089/scd.2012.0701
PLoS One
巻: 8 ページ: e68686
10.1371/journal.pone.0068686
巻: 8 ページ: e74749
10.1371/journal.pone.0074749
Veterinary Immunology and Immunopathology
巻: 156 ページ: 121-127
10.1016/j.vetimm.2013.09.016
Journal of Veterinary Medical Science
巻: 75 ページ: 1485-1490
10.1262/jrd.2013-025
巻: 59 ページ: 595-598
http://www.vet.osakafu-u.ac.jp/cellE/cellE.html