研究課題/領域番号 |
24380173
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 日本獣医生命科学大学 |
研究代表者 |
盆子原 誠 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 准教授 (50343611)
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研究分担者 |
田崎 弘之 日本獣医生命科学大学, 獣医学部, 教授 (80231405)
近江 俊徳 日本獣医生命科学大学, 医学部, 教授 (40296091)
富張 瑞樹 帯広畜産大学, 畜産学部, 助教 (00552754)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 犬 / 組織球性肉腫 / oncogene addiction / キナーゼ |
研究概要 |
悪性腫瘍の中には、単一のシグナル経路に強く依存して生存・増殖する性質(oncogene addiction:癌遺伝子依存)を持つ腫瘍がある。本研究課題では、1)犬および猫由来の悪性腫瘍細胞においてoncogene addictionを有するタイプの腫瘍を特定する、2)腫瘍細胞が依存している異常なシグナル経路を特定し、その経路を標的とした分子標的療法の効果を明らかにする、3)依存している異常な経路が、分子標的療法の適応症例を選別するバイオマーカーとして利用できるかを明らかにすることを目的としている。平成24年度は主にoncogene addictionを有するタイプの腫瘍を特定するスクリーニングシステムの構築と候補細胞株の決定を目的とした。このスクリーニングシステムは順調に構築でき、これにより犬の悪性腫瘍細胞株において、組織球性肉腫細胞株の中にはoncogene addictionを有する株があることを明らかにした。これらの株化細胞はSrc、BCR-ABL、KITなどを阻害するマルチキナーゼ阻害剤ダサチニブで著しく増殖が抑制されることから、ダサチニブの標的キナーゼのどれかに強く依存して増殖していることが示された(Ito et al., 2013 Vet J in press)。そこで、標的機構を絞り込むため、細胞内シグナル伝達経路の最下流に位置するJAK-STAT経路、AKT経路、PI3K経路の異常の有無についてウェスタンブロッティングを用いた解析を行った。しかしながら、今のところこれらのシグナル伝達系に異常な活性化はみられておらず、よりマイナーな経路を用いた増殖機構が存在するのではないかと考えている。現在、このoncogene addictionを惹起する経路を厳密に特定するため、犬の組織球性肉腫細胞株より抽出したタンパクの二次元電気泳動解析と質量解析を行っている。この解析により、oncogene addictionを引き起こす異常分子が特定できれば、他の種類の悪性腫瘍細胞株における同様の異常の有無を解析することが可能となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度はoncogene addictionを有するタイプの腫瘍を特定することができた。この特定は本研究の重要な律速段階であり、当初困難が予測されていたことから、平成24年度の大きな課題は達成できたと考えられる。 また、この成果はすでに学術論文としてVet J誌に掲載が確定したことからも、順当に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
犬の組織球性肉腫のoncogene addictionメカニズムを明らかにする。また、平成24年度に確立したoncogene addictionを有する腫瘍のスクリーニングシステムを用いて、組織球性肉腫以外の腫瘍についてもoncogene addictionの有無を検索し、新たなoncogene addictionメカニズムを明らかにする予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度に引き続き、犬および猫の腫瘍症例より腫瘍細胞の採取を行う。また、採取した腫瘍細胞は様々な条件で培養し、株化を試みる。前年度に特定した異常分子については、MetaCore解析を行い、異常分子に関連するシグナル経路の絞り込みを行う。
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