研究課題/領域番号 |
24380176
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
横山 正 東京農工大学, 大学院・農学研究院, 教授 (70313286)
|
研究分担者 |
鈴木 創三 東京農工大学, 大学院・農学研究院, 教授 (30137898)
渡邉 泉 東京農工大学, 大学院・農学研究院, 准教授 (30302912)
木村 園子ドロテア 東京農工大学, 大学院・農学研究院, 准教授 (60397015)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | 環境修復 / バイオ肥料 / 放射性Cs137 / 生物相関 |
研究概要 |
2011年3月11日の福島第一原子力発電での事故により、農耕地等に大規模な放射能汚染が生じている。放射能物質のうち、Cs-137は半減期が30.17年と非常に長く、汚染した農耕地の修復は、日本の農業にとり非常に重要である。本研究では、バイオ肥料微生物と除去作物によるCs除去能強化を評価し、田畑における放射性Cs除去の加速化の可能を検証しする。また、本技術を森林-水田流域系において今後生じる各Cs同位体循環の断絶に応用し、農耕地や水稲等への放射性Cs集積程度の予測と低減により、福島および東日本の農業復興を支援する。(1)バイオ肥料を用いた放射性Csで汚染土壌からの放射性Cs除去の可能性の検証:本年度は、周年的な栽培体系に適し、放射性Cs除去を加速化する除去植物-バイオ肥料の最適組合せの探索のため、特に、福島県二本松周辺で作られている小松菜等に焦点をあて、圃場試験を行った。各作物品種で、放射性Cs吸収量は異なっており、小松菜類では、バイオ肥料の接種効果で放射性Cs吸収が促進される品種と促進されない品種等があった。また、アブラナ科作物に対しては、Bacillus属バイオ肥料より、Azospirillum,属バイオ肥料の方が、放射性Cs吸収力を上昇させた。カラシナでその効果は明瞭に違いが生じた。また、小松菜等の栽培で、地元の有機物堆肥およびPGPRの共施用は、作物の生育を大きく促進し植物体における放射性Cs濃度を低下させた。一方、有機物堆肥を使用せず、PGPRを接種すると、植物体中のCs濃度は増加した。(2)二本松市土壌における放射性Csの存在画分は、水溶性画分がCs137で6~11%を占めていた。水溶性画分とイオン交換態画分を合わせた、植物に吸収されやすい形態で存在している割合としても9~13%であった。有機物態画分は2~31%であった。そのため土壌中に存在する放射性Csの9割は酸化物や粘土に強固定され、植物等に利用できにくい存在形態になっていることが推定された。(3)阿武隈川支流における放射性セシウムの分布と動態解明:福島県二本松市周辺の阿武隈川支流における放射性セシウムの分布と挙動解析を行った。その結果、数地点で特異的な高レベルが認められること、季節変動として全体的な減少傾向が認められること。植物と雑食性動物に濃縮が認められることを明らかとした。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
福島県二本松市東和地区のNPO法人「ゆうきの里東和ふるさとづくり協議会」の協力を得て、東和地区でバイオ肥料と除去植物の組合せを探索する圃場試験を初年目に開始できた。また、各地での土壌サンプリングや、森林・水田流域系での放射性Cs野モニタリングも開始し、データの蓄積が得られている。また、水稲やダイズを各200系統移植し、放射性Csを吸収しない品種の探索も開始できた。東和地区の堆肥とバイオ肥料の組合せが、作物の可食部に放射性Csを蓄積させない農業技術としての可能性が示唆された。
|
今後の研究の推進方策 |
H25年度は、日本全国から収集したBrassica rapa37系統、Brassica juncia10系統、Brassica napus6系統を用いた圃場試験を行い、放射性Csを吸収する系統、吸収しない系統を明らかにする。また、バイオ肥料の接種が、各アブラナ科植物の放射性Cs吸収をどの程度上昇させるか再検討する。H24年度の二本松周辺の幾つかの野草が高いCs吸収能力を有している可能性が分かってきたので、それら野生植物のCs吸収の実態調査を行う。二本松市周辺には長石を母材とするペグマタイトが広く分布しており、カリウム供給力が豊富な地域であり、二本松周辺では、植物にCsが取り込まれにくい土壌環境であることが分かってきた。本年度は、除去植物とバイオ肥料の組合せだけでは、土壌に強く固定された放射性Csの可給化は難しいことが分かってきた。そこで、H24年度に、土壌粘土のフレイドエッジを産生した有機酸等で破壊し、層間に存在するイオンを吸収利用するカリウム溶解菌を複数株単離し、特性調査から培地に有機酸を分泌する株を複数見いだした。そこで、それらカリウム溶解菌を二本松の土壌に添加したときに、交換性放射性Csの存在量が増大するか、ポット規模のモデル試験を行い、その後、二本松市の圃場を用いて同様な試験を行い、カリウム溶解菌の接種が、除去植物のCs吸収量を増大させるか検証する。放射能汚染地域の森林-水田流域(畑地も含む)の灌概水-土壌-植物系での各種Cs同位体の複数年に渡る分布動態の解明に関しては、H25年度は、河川環境でみられた特異的な高レベルの発生メカニズムの解明を試みる。また、季節変動の詳細な追跡も続行する。動植物では、H24年度よりさらに種数を増やし、経時的なモニタリングも行うことで、調査地域の包括的な放射性Csの動態解明を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
基金分で次年度使用額があるが、これは、MUCHA等の放射線測定装置の容器(使い捨て)の購入代金であったが、H24年度に福島県二本松市で収集したサンプルの測定が全て終了せず、次年度に持ち越すので、その部分の消耗品代金である。H25年度に購入して、測定を継続しデータ取得を完了させる。
|