研究課題/領域番号 |
24380177
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
坂 志朗 京都大学, エネルギー科学研究科, 教授 (50205697)
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研究分担者 |
河本 晴雄 京都大学, エネルギー科学研究科, 准教授 (80224864)
山内 一慶 京都大学, エネルギー科学研究科, GCOE特定助教 (20467335)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 超(亜)臨界流体技術 / バイオリファイナリー / バイオマス / 液体バイオ燃料 / バイオ化学物質 |
研究概要 |
エネルギー問題、地球環境問題が深刻になるに伴い、再生可能、莫大な賦存量、カーボンニュートラル等の特長を持つバイオマスが、環境調和型の資源として期待されている。しかし、固体バイオマスはかさ高く輸送が困難であり、これが燃料やその他の有用材料としての利用の普及を妨げる一因となっている。そこで本研究では、水やフェノールの持つ特異性を活用して、広葉樹ブナ木材を亜臨界水および亜臨界フェノールを用いて液化し、その液化機構を明らかにした。その結果、270℃/1.8MPa/3minの亜臨界フェノール処理がリグニンの選択的な液化に効果的であり、ヘミセルロースの一部が液化するものの、セルロースはほとんど液化しないことが明らかとなった。一方、330℃/3.6MPa/10minの処理でほとんどすべての木粉がフェノールに液化することを見出した。次に、その液化機構をより詳細に明らかにするために、160-350℃/0.9-4.2NPa/3-30minの条件にて処理した結果、低温域でリグニンのエーテル結合及び非晶ヘミセルロースのエーテル結合が解裂し、液化が進行する一方、結晶性セルロース及び縮合型結合に富むリグニンは330℃以上の高温域で液化が顕著に進行することを明らかにした。また、リグニンが選択的に液化する270℃/1.8MPa/3minの亜臨界フェノール処理可溶部に種々の有機溶媒を添加した結果、ジエチルエーテルが貧溶媒として最も優れており、リグニン由来の沈殿物が効果的に回収されることを見出した。一方、フェノール不溶残渣はセルロースに富み、これを330℃/3.6MPa/10minにて処理することでセルロース由来の沈殿物を回収することが可能となった。得られたこれらの沈殿物は、それぞれフェノール化が進行しており、このことが木材の構成成分の効果的な液化につながったものと考察した。これらの結果から、ブナ木材及びその主要構成成分のフェノールによる熱化学的液化に関する反応挙動が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
種々の溶媒のうち、特に水とフェノールに注目し、その超(亜)臨界条件下でのブナ(広葉樹)の分解について詳細な検討を行なった。その結果、リグニンがフェノリシスによりフェノール化し、選択的に液化する反応条件を見い出した。得られた亜臨界水での分解挙動の結果と合わせて考慮することで、ブナ木材のフェノールによる熱化学的液化に関する反応挙動がかなり明らかになった。
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今後の研究の推進方策 |
フェノールの超(亜)臨界下でのブナの分解挙動について詳細な情報がこれまでの研究で明らかとなり、今後は各種フェノールについての同様の検討を深化させ、木質バイオマスの熱化学的液化の反応挙動をより明確なものに仕上げて行く。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度に比べ、本年度の助成金は30万円と極めて少なくなるため、種々の試薬などの購入が可能になるよう未使用額(約12,4万円)を捻出した。
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