研究課題
昨年度は、脂質代謝などに関与するペルオキシソーム増殖剤応答性受容体 (PPARα) に着目し、これまでにBFRsによるPPARαの転写活性化やそれら活性化能はPFCsと比較して7~17倍強いことを初めて明らかにした。そこで本年度は、時間分解蛍光共鳴エネルギー転移 (TR-FRET)を用いたPPARα-BFRs相互作用のハイスループットスクリーニング法を構築するため、まずPPARα組み換えタンパク質の合成を試みた。PPARαのリガンド結合領域(LBD)をpEU-E01-GST-N2 vectorあるいはpEU-E01-His-N2 vectorに挿入し、タンパク質発現プラスミドを作製した。次に、ENDEXT® Wheat Germ Expression G/H Kitを用いてin vitro無細胞タンパク質発現系によりGlutathione S-transferase(GST)あるいはHistidine(His)タグ融合核内レセプターLBDタンパク質を発現させ、Glutathione Sepharose 4BあるいはNi Sepharose High Performanceでこれらタグ融合タンパク質を精製した。精製タンパク質はSDS-PAGEで分離後、CBB染色により精製度を確認し、Bioanalyzer (Agilent) でタンパク質濃度を定量した。In vitro無細胞タンパク質発現系により、GSTおよびHisタグ融合PPARα-LBDタンパク質の合成・精製に成功した。TR-FRETを用いたアッセイ系を構築するため、大量合成・精製したPPARαリガンド結合領域 (LBD)-GST融合組み換えタンパク質をテルビウム標識抗GST抗体で標識し、各濃度の試験物質および蛍光標識トレーサーとの競合反応を行った。得られた用量反応曲線から、PPARα組み換えタンパク質との相互作用に関する試験物質の50%抑制濃度IC50値を算出した。PPARαアゴニストであるGW0742について試験系の構築を行ったところ、良好な用量反応曲線が得られ、IC50値も既報と同程度であった。
2: おおむね順調に進展している
これまで臭素系難燃剤によるPPARαの活性化やPPARαを介した生体影響評価に関する研究は皆無であった。本研究により初めて「臭素系難燃剤によるPPARαシグナル伝達撹乱」という新たな毒性作用機序の一端が明らかとなった。また、これまで報告された有機フッ素化合物によるPPARαの活性化能と比較しても、今回見出された臭素系難燃剤によるPPARα活性化能は極めて強いことが明らかとなった。時間分解蛍光共鳴エネルギー転移 (TR-FRET)を用いたPPARα-BFRs相互作用のハイスループットスクリーニング法の構築についても準備が整ってきた。In vitro無細胞タンパク質発現系により、GSTおよびHisタグ融合PPARα-LBDタンパク質の合成・精製に成功した。また、TR-FRETを用いたアッセイ系を構築するため、大量合成・精製したPPARαリガンド結合領域 (LBD)-GST融合組み換えタンパク質をテルビウム標識抗GST抗体で標識し、各濃度の試験物質および蛍光標識トレーサーとの競合反応を行ったところ、PPARαアゴニストであるGW0742で良好な用量反応曲線が得られ、IC50値も既報と同程度であった。これらのことから、本ハイスループットスクリーニング法により、今後臭素系難燃剤への適用が実施できる。
他の野生高等動物PPARαの単離・同定をより一層強化し、in vitroレポーター遺伝子アッセイ系の構築や臭素系難燃剤によるPPARα活性化の測定、in vitro無細胞タンパク質発現系によるタンパク質の合成やTR-FRETへの適用など、比較生物学的なPPARαシグナル伝達撹乱を指標としたリスク評価手法を確立する。
当初予定していた学会に参加しなかったため。国際学会等で研究成果を発表する予定である。
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Journal of Environment and Safety
巻: 4 ページ: 印刷中
Journal of Applied Toxicology
巻: 34 ページ: 印刷中
Toxicological Sciences
巻: 131 ページ: 116-127
10.1093/toxsci/kfs288
Japanese Journal of Food Chemistry and Safety
巻: 20 ページ: 22-30