研究課題/領域番号 |
24380184
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
有村 慎一 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (00396938)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ミトコンドリア |
研究概要 |
植物ミトコンドリアは独特の形態(小さく数が多い)と動態(分裂・融合を繰り返しながら、また動物細胞のものよりも速く動き回る)を持っている。これらを支える分子メカニズムと生物学的意義を探索するために、ミトコンドリアの形態や細胞内分布に異常を持つ突然変異体を多数単離し、原因遺伝子を同定、遺伝子産物の機能解析を進めるとともにその突然変異体の植物生育や発達の様子を解析することで、その生物学的意義を探っている。ミトコンドリアの分裂に異常が生じたelm1突然変異体が低温に応答したミトコンドリア分裂には関わらないことについて、アルゼンチンで開催された国際植物ミトコンドリア会議や植物細胞分子生物学会で発表した。elm1突然変異体はミトコンドリアが分裂できず、著しく長いミトコンドリア(elongate mitochondria)を持つのが特徴であるが、4度程度の低温に曝露することで、ミトコンドリアが小さく粒状になる、つまりミトコンドリア分裂が促進されることが明らかになった。この現象は注意深く観察したところ野生型でも起こる現象であり、植物ミトコンドリア分裂は、通常はELM1を用いた分裂がおこり、また低温に応答してELM1非依存的な分裂機構によりミトコンドリアの小型化と数の増加を達成させていることが明らかになった。また、ミトコンドリアの大きさが不均一になるfzr(fuzoroi)変異体について日本植物生理学会で発表した。FZR1はその配列特徴から脂質代謝酵素であることが推測され、実際にfzr突然変異体ではいくつかの脂質の組成に異常が見られ、ミトコンドリア特異的な脂質代謝経路を担う興味深い酵素であることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究開始当初にスクリーニングが終了していたミトコンドリア形態突然変異体について、計画通りその原因遺伝子を特定し、またその細胞内局在、遺伝子産物機能解析とも順調に進んでいる。また、昨年新たに二つの環境要因に応答してミトコンドリアの細胞内分布、ならびにミトコンドリア分裂が応答していることを見いだし、また之に関連する遺伝子を見つけている。これらに関しても、ミトコンドリア蛍光可視化ライン、突然変異体を用いて解析を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
植物ミトコンドリアの形態が不均一になる突然変異体の原因遺伝子はミトコンドリア内で機能する脂質代謝関連遺伝子であった。この突然変異体、並びに遺伝子産物を大腸菌などで発現させ、実際にどの脂質代謝反応に機能するか、生化学的な検討を行う。各種ミトコンドリアの形態突然変異体の環境応答をみながら、ミトコンドリアの融合脳力の検定を行う。ミトコンドリア分裂の因子の一つは、これまで機能未知の構造タンパク質だと思われていた物が、これも酵素をコードしている可能性がBLAST-Clustal解析から明らかにされてきた。この関連遺伝子群について、T-DNA挿入遺伝子破壊系統を用いて、また交配し変異を集積し、ミトコンドリアの形態を解析する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
植物ミトコンドリア形態突然変異体について、技術補佐を雇用して全てのマッピング、遺伝子解析を行う予定であったが、適任者が見つからなかった。そのため、一部の作業が遅れており、この部分は来年度雇用技術補佐による作業とシークエンス解析の外注で行うため、次年度使用とした。 前述したとおり、原因遺伝子同定の終わっていない突然変異体について、そのマッピングとシークエンスを行い当該作業を終了させる。このために人件費と物品費(消耗品)が必要である。
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