研究課題/領域番号 |
24390002
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
金井 求 東京大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (20243264)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | sp3C-H結合 / 銅触媒 / アミド化 / アセトキシ化 / カルボ酸素化 / アレン |
研究実績の概要 |
元素戦略的に有利な汎用金属である銅触媒を用いて、sp3C-H結合の触媒的分子内アミド化反応の開発に成功した。Daugulis型のキノリンアミドを持つ基質に20 mol %の酢酸銅と3当量の炭酸銀を140度で反応させると、アミドの窒素原子がγ位のsp3C-H結合に挿入したβ-ラクタムが高収率で得られた。活性化されるsp3C-H結合としては、ベンジル位>メチルの順であり、メチレンC-Hは活性化されない。本反応は銅触媒を用いる世界初のsp3C-Hアミノ化反応である。反応機構的には、キノリンアミドにキレートされた酢酸銅がCMD機構でsp3C-Hを活性化して5員環銅アミド中間体が生じ、炭酸銀がこれを酸化して3価の銅を経て還元的脱離が進行し、C-N結合が生じるものと考えている。あるいは、2価酢酸銅が最初に炭酸銀より酸化され、これがsp3C-Hの活性化を行う経路も考えられる。現在、反応機構解明と不斉触媒に向けた検討を行っている。 本発見を基に、当量の酢酸銅と酢酸銀を用いたDaugulis型のキノリンアミドのβ位選択的アセトキシ化反応を見出した。上記と近い反応条件であるにもかかわらず、アセトキシ化反応はメチル基で選択的に進行して、ベンジル位では進行しない。また、触媒回転は現状までのところ得られていない。酢酸銅を等量用いているにもかかわらず酢酸銀が存在しないと反応が進行しないことから、上記の反応機構のうち後者が有力であると考えている。このように2つの反応を比較することで、今後の反応開発に有用な興味深い知見が得られる。 また、sp3C-H結合を活性化した反応ではないものの、銅触媒によるアレン二重結合のカルボ酸素化反応を見出した。本反応は、アレン、アリールボロン酸、TEMPOとの3成分カップリング反応であり、再酸化剤である二酸化マンガンの存在下、室温で進行する。反応機構解析実験より、ラジカルが関与する反応経路をとっていることが示唆されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
汎用金属触媒を用いたsp3C-H結合官能基化反応で、反応機構も含めた非常に興味深い知見が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
反応機構解析を継続するとともに、そこで得られた独自の知見に基づく不斉触媒化を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究が予想より早く進行しており、最終年度に集中して資金投資を行って多大なる成果を挙げたいと考えているため。
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次年度使用額の使用計画 |
様々な不斉配位子を購入し、検討する。
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