研究課題/領域番号 |
24390004
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
大嶋 孝志 九州大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (10313123)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 有機化学 / 有機合成 / 化学選択性 / 環境調和 / 触媒 |
研究概要 |
申請者はこれまでに亜鉛四核クラスター触媒によるアミン共存下での水酸基選択的アシル化反応の開発およびRh触媒によるアルデヒド存在下でのケトン選択的不斉アルキニル化反応の開発に成功している。本申請課題では、それぞれの官能基の活性化に適した金属を触媒に組み込むことで、官能基本来の反応性の差に由来する化学選択性を触媒的に制御(逆転)し、保護・脱保護のプロセスを経ない環境に優しい合成プロセスを開発することを目的として検討を行っている。 平成25年度の研究によって、以下の研究成果を得た。 (1)亜鉛あるいはコバルト四核クラスター触媒のアミン存在下による水酸基選択的アシル化反応の機構解明に成功し、この反応機構に基づき新たにソフトルイス酸とハードブレンステッド塩基による化学選択的Michael付加反応の開発に取り組み、アクリロニトリルへのアミン存在下による水酸基選択的Michael付加反応の開発に成功した。さらに、ソフトなルイス酸による求電子剤の選択的な活性化にも成功し、求核剤と求電子剤ともに化学選択的な触媒反応の開発に成功した。 (2)Rh-Phebox触媒によるアルキニル化反応の反応機構解析の解明に成功し、真の活性種の同定と、それを用いた反応の加速化及び基質一般性の拡張にも成功した。 (3)活性エステルを用いた化学選択的アシル化反応の開発に取り組み、鉄触媒が最も優れた触媒活性と化学選択性を有することを見出した。本触媒系の特徴として、立体障害の大きなt-BuOHなどの基質を用いてもエステル交換反応が進行することである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初予定していた亜鉛触媒反応およびロジウム触媒反応の化学選択的触媒反応の開発に加え、ランタノイド触媒を用いた新たな化学選択的触媒反応の開発に成功し、さらに、亜鉛触媒反応の化学選択性発現の機構をコバルト錯体を用いた検討を行うことによって解明し、それらの知見を基にH25年度は新たに銅触媒および鉄触媒を用いる化学選択的な触媒反応の開発に成功した。新規触媒反応の開発だけではなく、しっかりと反応機構解析も行っており、今後さらなる展開が可能な一般性の高い化学選択性の制御法の開発が可能となったため。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度および25年度の研究で解明した化学選択性の制御機構を基に、求核剤だけではなく、求電子剤に関しても化学選択的な触媒反応の開発に取り組む。すでに幾つかの知見を得ており、今後は、様々な求電子剤および求核剤の組み合わせで、新たな化学選択性の触媒的制御法の開発を行う。また、開発した化学選択的な触媒反応を基盤とし、有用生物活性化合物の環境調和型短工程合成プロセスの開発を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
触媒として利用するロジウムや白金などの高価な金属錯体の購入に大きな支出を予定していたが、反応条件の最適化や、活性種の同定により、触媒量の大幅な低減に成功したため、また、元素戦略に基づき、より安価かつ埋蔵量の多い金属への変更の検討を行い、鉄や銅などの3d遷移金属への変換に成功したため、金属錯体の購入費が減ったことが主な理由である。 H26年度は、様々な求核剤と求電子剤との組み合わせで、化学選択性の触媒制御法の開発を検討するため、まずは金属種にこだわらず、可能性のある金属錯体および配位子を網羅的に検討することを予定しており、H25年度分の予算を合わせて、それらの試薬の購入に使用する予定である。
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