研究課題/領域番号 |
24390006
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
安齋 順一 東北大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (40159520)
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研究分担者 |
佐藤 勝彦 東北大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (80400266)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ミクロカプセル |
研究概要 |
本年度は、交互累積膜およびミクロカプセルにグルコース応答性を付与するために、フェニルボロン酸(PBA)を修飾した直鎖状ポリアリルアミン(PAH)およびポリアミドアミンデンドリマー(PAMAM)を合成し、それらを用いて作製した交互累積膜およびミクロカプセルのグルコース応答性について検討した。PBA活性エステルを用いて目的とするPBA修飾PAHおよびPBA修飾PAMAMを合成した。PBA修飾PAHとポリビニルアルコール(PVA)を用いると、PVA中の1,3ジオール部位とPBAが環状エステルを形成することを駆動力として交互累積膜が形成された。この交互累積膜はpH3-10の水溶液中で安定であることがわかった。また、かなり高濃度のグルコース溶液に浸しても膜は分解することがなく、予期したようなグルコース応答を示すことはなかった。これは、PBA部位にグルコースが結合してPVAとのエステル結合が切断されても、水素結合や疎水結合などの弱い結合が多点で存在するために、交互累積膜が分解しなかったものと推測される。一方、PBA修飾PAMAMとPVAを用いて作製した交互累積膜は、pH7-9では安定に存在するがそれよりも酸性側では分解することが明らかになった。また、pH7.4で150mMの食塩を含有する生理的条件で5-30mM程度のグルコース溶液に浸すと、交互累積膜は迅速に分解した。PBA修飾PAMAM中のPBAにグルコースが結合してPVAとの結合が切断されたためと思われる。一分子のPBA修飾PAMAM中のPBA残基数は限られているために、予期したグルコース応答を示したものである。PBA修飾PAMAMを用いてミクロカプセルを調製することを検討したが、現在作製条件の最適化を実施している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定した材料の作製はほぼ終了し、材料の性能評価が進展している。その過程で有望な性能を示す材料が得られた。これらを用いて、交互累積膜およびミクロカプセルを作製してグルコース応答系を確立することに目途がたっている。
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今後の研究の推進方策 |
PBA修飾PAMAMが良好なグルコース応答を示すことが明らかになってので、今後はこれを用いてインスリンを含有するミクロカプセルを作製して、グルコース濃度の上昇に応答してインスリンを放出するシステムの開発を行う。一方、PBA修飾PAHを用いると、グルコース濃度が上昇しても膜の分解が起こらないことがわかったので、この系をもちいて非分解ミクロカプセルからのインスリン放出についても検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
助成金の計画的な使用に努力したが、調製した累積膜の良好な性能が明らかになり、その物性評価項目が増大し新たな材料を使用することがすくなくなり、購入材料が予想以下で済んだことにより次年度使用額が生じた。 次年度は本研究の最終年度なので、これまでに使用していない材料の検討も行うために、次年度使用額は主にこれらに充てる予定である。
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