物質が機能する場所やタイミングの制御は、物質の適正な使用、安全面なので非常に重要である。本研究で我々は、低分子化合物を内包した光開裂性シリカ製ナノ粒子を開発した。本ナノ粒子の調製には、ラジカル重合を用いず、また形成される網目構造が非常に細かいため、いろいろな低分子化合物(ローダミン、propidium iodide (PI)、ナイルブルー)を、機能を維持した状態で内包した。 一方、本ナノ粒子に光照射することで、内包した物質は放出され、機能を回復したことから、本ナノ粒子は汎用的な機能制御法として使用できると考えられた。さらに照射する光量を増加させるに従い、放出される内包物質の量も増加した。しかし調製したナノ粒子は細胞内に取り込まれないため、PI内包ナノ粒子の表面に細胞膜透過性ペプチド(R8)を被覆し、細胞に導入した。その結果、光照射前はナノ粒子に内包された状態で細胞質に存在していたPIが、20秒間の光照射によって、ナノ粒子から放出され、2分後には核内に移行していることが観察された。したがった本ナノ粒子は、内包していた小分子を短時間の光照射で放出し、直ちに機能を発現させることが可能な、優れた時空間制御法として利用できると考えられる。 最近、細胞内の局所での物質の機能に興味が集まっているので、本ナノ粒子を用いることで、これらの解析が可能になると期待している。また機能性物質の放出を光で正確に制御可能な本ナノ粒子は、DDSや光センサーへの応用も期待される。
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