研究課題/領域番号 |
24390015
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山本 一夫 東京大学, 新領域創成科学研究科, 教授 (20174782)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | レクチン / 糖鎖 / 蛋白質 |
研究概要 |
ヒストンや転写因子等の核内タンパク質に付加されるβ-N-アセチルグルコサミン(O-GlcNAc)修飾の細胞生物学的意義を明らかにするために、マメ科レクチンの糖認識にかかわるループC及びDのアミノ酸をランダムに置換したライブラリーを作成し、その中からcell surface display法を用いてO-GlcNAc特異的な改変レクチンを取得することができた。この手法では、糖結合特異性を改変したものが多数取得できたことに加えて、特異性を改変したレクチンだけでなく、糖に対する結合力が増強されたものも複数取得され、さまざまな応用に利用できることが明らかになった。植物レクチンのスキャフォールドは糖への結合に特化していて、効率よく糖に結合する改変レクチンを得ることができたと考えられる。一方、細胞表面に存在する糖タンパク質を標的にスクリーニングを行った結果、糖以外の部分も認識できる改変レクチンクローンも得ることができ、特定のタンパク質のアミノ酸配列上のO-GlcNAc修飾を追跡する特異的プローブにもなり得る可能性が示唆された。ライブイメージングを行う前段階として、細胞内のO-GlcNAc修飾タンパク質を追跡するために、改変レクチン/Fc融合タンパク質の作成を行った。具体的には、改変レクチンのC末側側にヒト抗体のFc領域を繋いだFc融合タンパク質を作成するための発現ベクターを構築し、これをHEK293T細胞に発現させた。この細胞の培養上清を回収し、プロテインGセファロースカラムにより分泌された改変レクチン/Fc融合タンパク質の精製を行った。今後、細胞内染色を行うと共に、細胞内に改変レクチンとGFPの融合タンパク質を発現させて、ライブイメージングを行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
効率的なcell surface displayのスクリーニング方法が確立できたために、効率的な改変レクチンの単離が達成された。これらのレクチン遺伝子を発現させるベクターも作成できており、ライブイメージングの条件検討も少しずつ進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、O-GlcNAc修飾の細胞内における反応をライブイメージングで追跡することを行う。具体的には、サイトカインや増殖因子などによる活性化の前後の細胞を調製し、今回作成した改変レクチン/Fc融合タンパク質で細胞内染色を行う。また、経時的な変化を追跡するために、細胞内に改変レクチン/GFP融合タンパク質を発現させることを試みる。後者に関しては、細胞の活性化に伴って経時的にどのような局在の変化を起こすかを、蛍光顕微鏡下で観察する予定である。一方、O-GlcNAc修飾を受けるタンパク質の同定を別個に行っており、10を超えるタンパク質を見出している。これらの遺伝子も概ね単離しており、それぞれの活性に関わる変異体の作成や遺伝子ノックダウンを通して、核内タンパク質のO-GlcNAc修飾の生物学的意義を評価する計画である。
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