研究課題/領域番号 |
24390016
|
研究種目 |
基盤研究(B)
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
金子 周司 京都大学, 薬学研究科, 教授 (60177516)
|
研究分担者 |
中川 貴之 京都大学, 薬学研究科, 准教授 (30303845)
白川 久志 京都大学, 薬学研究科, 助教 (50402798)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | TRPチャネル / カチオン輸送 / 神経変性疾患 / 脳内炎症 / 慢性疼痛 / 慢性膀胱炎 / グリア細胞 |
研究概要 |
本研究の目的は、神経細胞・グリア細胞・末梢由来免疫担当細胞等で特異的に発現するTRPチャネル分子群等に焦点をあわせ、各種疾患へどのように関与するかを明らかにすることにある。本年度は主な知見として以下の結果を得て、学会・原著論文等で発表した。 1、大腸がん治療に用いる白金系抗がん剤オキサリプラチンは、ほぼ全ての患者において投与直後から数日以内に、寒冷被爆で誘発・増強される急性末梢神経障害が生じることが問題となっている。そこで、一次感覚神経細胞において冷侵害受容器として機能するTRPA1に着目し動物モデルを用いて解析したところ、TRPA1の過敏化がオキサリプラチンによる神経障害に特異的に寄与していることを見出した。 2,慢性膀胱炎の一種である間質性膀胱炎は頻尿.尿意切迫感および膀胱痛などの症状を示す器質的疾患であり治療薬創製が求められているが、妥当な動物モデルの欠失が研究の進展を阻害していた。そこで1.5%過酸化水素をマウス膀胱内に直接注入することによりモデル構築を試みた結果、血管透過性が亢進し、好中球などの炎症性細胞が浸潤する長時間持続型慢性膀胱炎モデルを構築することに成功した。現在、この動物モデルを用いてTRPチャネルの関与について検討中である。 3,コラゲナーゼまたは自家血注入による二種類のマウス脳内出血モデルに対してTRPC3選択的阻害薬Pyr3の作用を検討したところ、両モデルにおいてPyr3投与は形成される血腫体積に影響を与えずに、脳内出血後の神経障害および行動障害を有意に抑制した。さらに、Pyr3は脳内出血惹起6-24時間後から投与しても有意な寛解作用を発揮した。組織学的な検討結果も合わせると、脳内出血に伴う神経機能障害に対して、TRPC3阻害薬が寛解作用を有し、その作用機序としてアストロサイトの活性化抑制が重要であることが示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一部、対象疾患モデルの作出に遅延を認めているが、対象疾患範囲の拡大等を行った結果、学会および原著論文にて発表することができる成果を得たため、おおむね順調に進展していると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き神経細胞・グリア細胞・末梢由来免疫担当細胞等で特異的に発現するTRPチャネル分子群等に焦点をあわせ、一部範囲を拡大した対象疾患の病態においてどのような関与を及ぼすかについて検討を進めていきたいと考えている。
|
次年度の研究費の使用計画 |
前年度において一部の対象疾患モデルの作出に困難な点が生じたためスケジュールを組み直した。そのため一部の研究遂行に関して遅延を認めたが、今年度以降において十分遂行可能であると考えている。また前記以外のin vitroおよびin vivo実験系に関しては、計画通りに研究を遂行していく予定である。
|