研究課題
基盤研究(B)
神経系でのプロスタグランジン(PG)E_2の作用として、発熱や痛覚過敏などが古くから知られていたが、近年、新たなPG作用として、脳の性分化、アルツハイマー病(AD)増悪、海馬の神経新生(抗うつ性応答)、海馬シナプス伝達増強が発見された。PGE_2の作用は4種類の受容体(EP1~EP4)を介して発揮される。申請者はこれまで、EP受容体欠損マウスを用いてPG作用の意義を解析し、例えばオス性行動やAD増悪にEP4受容体が関与することを同定してきた。しかし、EP受容体は脳内で広範に存在するため、PG作用の発現機構は不明であった。本研究の目的は、PGE_2の神経作用が、どの部位・細胞の受容体を介し、いかなる分子機構により発揮されるのかを明らかにすることである。今年度は、アルツハイマーに関しての解析を行い、アルツハイマーモデルマウスAPP-23を用いた解析を行った。その結果、本APP-23マウスにおいて自然発症する認知機能の障害やアミロイドβの蓄積が、EP4欠損やEP4遮断薬投与で緩和されることを見出した。従って、神経細胞に発現するEP2/EP4受容体がPGE2刺激によって活性化され、γセクレターゼのエンドサイトーシス・活性化を介して、アミロイドβ産生を促進し、本疾患における神経細胞ならびにシナプス欠失の一翼を担う可能性を示唆した。また抗うつ刺激として用いられる電撃性刺激(ECS)が視床下部腹内側核(VMH)ニューロンにおいて食欲抑制性遺伝子の発現誘導を来すことで、食物摂取ならびに体重増加を抑制することを見出した。
3: やや遅れている
夏期節電協力による動物飼育室の温度上昇のため、マウスの繁殖効率が悪く、個体数の確保ができずに、全ての項目の解析を予定通りに進めることができなかった。
25年度は夏期の電力状況の改善が見込まれるため、マウスの繁殖規模を拡大することにより、初年度の遅れを取り戻す予定である。
マウスの繁殖効率が遅れたため、全ての項目の解析を予定通りに進めることができず、予定していた解析に要する経費を次年度に繰り越す形となった。25年度の当初計画に加え、24年度に遅れた解析を同時に進める。
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