研究課題/領域番号 |
24390020
|
研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
西道 隆臣 独立行政法人理化学研究所, 脳科学総合研究センター, チームリーダー (80205690)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | アルツハイマー病 / アミロイドβペプチド / カルシウムチャネル / オリゴマー |
研究概要 |
アルツハイマー病(AD)発症機構のカスケードにおいて、アミロイドβペプチド(Aβ)の蓄積は上流に位置すると考えられるが、その作用機序は不明な点が多い。神経細胞におけるカルシウム恒常性の破綻がADの神経病理において中心的な役割を果たすと考えられているが、Aβ複合体のオリゴマーがどのようにして恒常性の破綻を生じさせるのか、は明らかでない。本研究では、種々のAβ分子種からなる異なった分子量のAβオリゴマーを調製し、カルシウムチャネル形成能を検証する。原因物質であるAβが引き起こすと想定されるカルシウム恒常性の破綻の機構をカルシウムチャネル形成能の観点から探ることが本研究の目的である。 AD患者の脳内には、Aβ1-40、Aβ1-42、Aβ1-43、Aβ3(pE)-40、Aβ3(pE)-42、Aβ3(pE)-43(pE:ピログルタミン酸)が多量に存在する。昨年度に引き続き、これらのAβを使用し、ペルオキソ二硫酸アンモニウムとルテニウム触媒を使用した光化学反応であるPICUP(photo-induced cross-linking of unmodified proteins)法により、Aβオリゴマーの効率的な調製法を検討した。様々な実験条件を検討したところ、高性能水系ゲルろ過カラムを使用した高速液体クロマトグラフィーによる非常に良好な精製法を確立することが出来、今後の有効活用が期待された。さらに、高分子量Aβオリゴマーに関してより効率的な調製・精製法も検討した。また、カルシウムチャネル形成能の検証のために、評価系の構築を進めた。昨年度に引き続き、テフロンチャンバー上の人工脂質膜を用いたin vitroの評価系のセットアップを行った。併せて培養細胞を用いた評価系の構築にも着手した。カルシウムに鋭敏に応答する蛍光プローブを使用し、細胞内のカルシウム動態を経時的に検出できるようになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Aβオリゴマーの効率的な調製・精製法を確立し、さらに、高分子量Aβオリゴマーのより効率的な調製・精製法を検討している。また、人工脂質膜、培養細胞系という2種類の異なる評価系を構築し、Aβのカルシウムチャネル形成能を順次測定している。
|
今後の研究の推進方策 |
種々のAβ分子種からなる異なった分子量のAβオリゴマーを調製・精製する。精製したAβオリゴマーを人工脂質膜を設置したチャンバー内に加え、測定される電流によりチャンネル形成能を評価する。また、カルシウム動態に鋭敏に応答する蛍光プローブを活用することで、精製した特定のAβオリゴマーのカルシウム形成能を培養細胞上で評価する。2種類の評価系を用いて、特定のAβオリゴマーのチャネル形成能の有無を明らかにし、さらにAβオリゴマー間でのチャネル形成能の違いを比較する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
当研究チームに既存のHPLC用カラム(ゲルろ過カラム、イオン交換カラム、逆相カラム等)を活用して、 Aβオリゴマーの精製条件の検討を行なったことで、高額なカラム購入費を抑制することが出来た。 平成26年度は、未使用の昨年度基金分で、HPLC用高性能ゲルろ過カラム(分析用と大量精製用) および原料となるAβモノマーの市販品を購入し、Aβオリゴマーのさらなる効率的精製を目指す。
|