本年度は、①オフターゲット効果の回避を念頭としたRNA3’-末端ダングリングエンド部修飾法の開発とその生物機能、②脂溶性残基で修飾した塩基部欠損型リボースをRNA 3’-ダングリングエンド部に有する二本鎖RNAの合成とその機能評価、③クリック反応を用いてRNA3’-末端ダングリングエンド部にグルコサミン誘導体を導入した二本鎖RNAの開発とその機能評価、に関して興味深い結果が得られたため、その詳細を記載する。
①siRNAはRISCに取り込まれた後、片方の鎖 (sense鎖) が除去される。残った鎖 (antisense鎖) が配列特異的にmRNAと結合し、切断することで遺伝子発現抑制が起こる。しかし、誤ってRISCにsense鎖が残った場合、標的以外のmRNAに結合しオフターゲット効果が起こる。ダングリング部位への極性残基の導入によってsense鎖のRISCへの取り込みが抑制されることが示唆された。極性残基は比較対照のTTよりPAZとの結合親和性が低いことが示された。 ②2位水酸基をベンジル保護した2位ベンジル保護を導入することで分解酵素耐性がさらに向上することが予想された。合成した誘導体は塩基部欠損修飾によって遺伝子発現抑制能はあまり変化しないものの、分解酵素耐性が期待通り向上した。 ③肝細胞などに発現しているデスミン,ビメンチンはN-アセチルグルコサミンを選択的に認識することが知られている。糖鎖を認識するレセプターを介したデリバリー方法を構築するため、グルコサミン類縁体のRNAへのクリック反応を用いた簡便な修飾方法の開発を試みた。クリック反応を行い、グルコサミン類縁体を連結したRNAを合成した。現在、得られたグルコサミン結合型RNAの生物機能評価を行っている。
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