研究概要 |
ビリルビン(BR)をはじめとするアルブミン結合毒素(ABT)を除去する新しい血液浄化療法として,透析液中に血清由来のアルブミンを添加し,結合毒素を透析液中に引き抜くアルブミン循環透析法(ECAD)が注目されている.しかしながら,血清由来のアルブミンを用いる方法では臨床効果が不十分であるという問題を抱えている.そこで本研究では,ECADの効率化を目指して,ファージディスプレイ法を応用し,ABTに対して高親和性を示す機能性アルブミン分子の開発研究を行った. 1.M13ファージ表面に薬物結合部位サイトIが存在しているドメインIIを提示させ,バイオパニングにBR固定化ビーズを用いるファージディスプレイシステムを構築した. 2.薬物が入る位置を包み込むようなポケット構造をとる薬物結合部位サイトIに存在する,側鎖がポケットの内側に向いている14のアミノ酸残基(Lys195とLys199を除く)を標的にしてランダム変異を導入したファージライブラリーを作製した.様々な条件検討を行いながら,バイオパニングによるスクリーニング操作を進め,BR結合性が高いファージクローンを探索した. 3.得られたファージクローンの遺伝子配列の解析,および,ペルオキシダーゼ法によるBR結合活性の測定を進め,候補となるクローンの絞り込みを行った. 4.選択されたファージクローンから遺伝子を回収して,大腸菌発現ベクターに導入して,アルブミンドメインII変異体タンパク質の調製を行った. 5.SPRバイオセンサーを用いて,変異体タンパク質のBR結合活性の評価を行った. 現在までに,野生型に比べBR結合活性が幾分か高い複数のクローンが得られている.引き続き,スクリーニングを繰り返し行うが,同時にSPRバイオセンサーによるBR結合活性の解析方法の改善も進めている.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度は,当初の予想より多種類のアルブミン変異体クローンを獲得することができた.この実験結果から,平成25年度以降,BR結合活性を評価するアルブミン変異体数の大幅な増加が見込まれた.この問題へ対応のため,平成24年度に購入予定であった大型冷蔵庫の購入を取りやめたことで生じた学術研究助成基金助成金の未使用額を次年度分の交付金と合わせて,平成25年度に変異体タンパク質の調製の効率化に必要な大腸菌培養用の中型恒温振とう培養機の購入を計画している.
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