研究課題/領域番号 |
24390028
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
森岡 弘志 熊本大学, 生命科学研究部(薬学系), 教授 (20230097)
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研究分担者 |
小田切 優樹 崇城大学, 薬学部, 教授 (80120145)
小橋川 敬博 熊本大学, 生命科学研究部(薬学系), 准教授 (90455600)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 薬物認識 / ヒト血清アルブミン / ビリルビン / ファージディスプレイ / タンパク質工学 / 分子進化工学 / ランダム変異 |
研究概要 |
ビリルビン(BR)をはじめとするアルブミン結合毒素(ABT)を除去する新しい血液浄化療法として、透析液中に血清由来のアルブミンを添加し、結合毒素を透析液中に引き抜くアルブミン循環透析法(ECAD)が注目されている。しかしながら、血清由来のアルブミンを用いる方法ではABT除去能が十分でないため、現状では臨床効果が不十分であるという問題を抱えている。そこで、ECADの効率化による臨床効果の向上のため、ファージディスプレイ法を応用して、ABTに対して高親和性を示す機能性アルブミンの開発研究を行っている。 本年度は、昨年度に引き続き、より優れた変異クローンの獲得を目指し、下記のような研究を進めた。 M13ファージ表面に薬物結合部位サイトIを含むドメインIIを提示させ、BR固定化ゲルを用い、バイオパニングによるスクリーニング操作を行った。薬物結合部位サイトIは、4本のα-ヘリックスとそれらを支える1本の短い裏打ち型α-ヘリックスに囲まれた領域により、薬物を包み込むようなポケットを形成している。各α-ヘリックスからポケットの内側に16残基のアミノ酸がその側鎖を向けている。Lys195とLys199はBRとの結合に不可欠であるので、残りの14残基を標的として、20種類すべてのアミノ酸残基にランダム変異を導入したファージライブラリーを作製し、様々な条件検討(結合および洗浄条件、温度、塩濃度、界面活性化剤濃度、DMSO濃度等)を行いながら、スクリーニング操作を進め、BR結合性が高いファージクローンを探索した。 得られたファージクローンの遺伝子配列の解析、および、ペルオキシダーゼ法によるBR結合活性の測定を進め,候補となるクローンの絞り込みを行った。 選択されたファージクローンから遺伝子を回収して、大腸菌発現ベクターに導入して、アルブミンドメインII変異体タンパク質の調製を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト血清アルブミンの薬物結合部位サイトIにランダム変異を導入したM13ファージライブラリーを作製し、バイオパニングによるスクリーニング操作により、BRに対して結合活性を示す多くのファージクローンを獲得した。それで、大腸菌発現ベクター、ならびに、ピキア酵母の発現ベクターに導入し、アルブミン変異体タンパク質の調製を行った。BR結合活性の評価は、等温滴定型マイクロカロリーメーター(ITC)による解析、ならびに、表面プラズモン共鳴(SPR)バイオセンサーによる精密解析により行っている。また、アルブミンの立体構造情報に基づき、得られたアミノ酸配列情報を解析して、ビリルビン結合領域を推察している。統合計算化学システムMOEを用いて分子モデリングを行い、BRと相互作用するアルブミン分子内のアミノ酸残基の予想を進めている。 以上、平成25年度は研究実施計画に従って実験を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、さらに多種類の目的のアルブミン変異体クローン候補を獲得することができた。この結果、BR結合活性を評価するアルブミン変異体の試料数の大幅な増加が見込まれた。今後、アルブミン変異体の調製を進め。SPRバイオセンサーにより、得られたアルブミン変異体タンパク質のBR結合活性の精密解析を行う。また、小動物(高ビリルビン血症マウス)の静注に投与し、BRの尿中への排泄を測定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、予想以上の多くのクローン数が得られたため、当初予定していた大型冷蔵庫の購入を取りやめ、各クローンから変異体タンパク質を調製するのに必要な中型恒温振培養機を購入した。また、各変異体のBR結合活性の測定は、まず、ITCにより行い、次にSPRバイオセンサーの測定条件の検討を進めている。それで、多くの変異体タンパク質に対する、SPRバイオセンサーによる精密解析に必要なセンサーチップの購入は平成26年度に変更した。このような理由により、次年度使用額が生じた。 変異体タンパク質のBR結合活性の精密解析に用いるSPRバイオセンサーのセンサーチップを購入する予定である。
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