研究課題/領域番号 |
24390032
|
研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
三隅 将吾 熊本大学, 生命科学研究部, 教授 (40264311)
|
研究分担者 |
高宗 暢暁 熊本大学, 熊本大学イノベーション推進機構, 准教授 (60322749)
庄司 省三 熊本大学, 生命科学研究部, 名誉教授 (60040317)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | HIV / 根治療法 / 宿主因子 / ERK2 |
研究概要 |
これまでのHIV粒子プロテオーム解析の結果、HIVがコードするCAタンパク質の一つのSer16-Pro17モチーフにおいてSer残基特異的にリン酸化を受けていることを明らかにできていた(J. Biol. Chem. (2010) 285(33):25185-25195.)。我々は、このリン酸化を受けたモチーフを細胞内ペプチジルプロリルイソメラーゼPin1が認識することにより、HIV-1 RNAを保護していたCAコアのSer16-Pro17モチーフにおけるcis-trans異性化反応を介して崩壊するというHIV脱殻過程の新たなモデルを提唱している。今年度、CAタンパク質のSer16-Pro17モチーフをSer残基特異的にリン酸化する酵素がERK2であることを同定した (J. Gen. Virol. (2014) 95,1156-1166)。ウイルスの出芽時、ERK2はCAタンパク質の前駆体であるPr55とともにウイルス粒子内に取り込まれる。その後、前駆体タンパク質Pr55はHIV ProteaseによってProcessingをうけ、intermediatesを生じると、CAタンパク質のSer16-Pro17モチーフがERK2によってリン酸化を受けるというモデルを見出した。
ERK2阻害剤を用いた実験で、いくつかのERK2阻害剤がHIV脱殻過程を標的とした新規の抗HIV剤の候補となり得る知見を得ることができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ERK2阻害剤が新規の抗HIV剤として活用できる可能性を見いだしたことと、Pin1によるHIV脱殻モデルにおいてSer16-Pro17モチーフのERK2によるSer16残基のリン酸化が脱殻過程には必要であることを見いだせたことは、宿主キナーゼによりウイルス性CAタンパク質がリン酸化を受け、リン酸化が脱殻のための分子スイッチとなっているという学問的に重要な発見につながるととともに、HIVが有する易変異原性に対抗できる治療戦略の構築に寄与できると期待できるため。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度も申請書のPDCAサイクルに則って研究を展開するが、ERK2阻害剤を用いる場合、ウイルス粒子内に取り込まれているERK2だけをより積極的に阻害するといった戦略をさらに導入できれば、さらにERK2阻害剤の抗HIV剤としての期待はますます高まる。DDSの概念もうまく導入して、in vivoにおける候補阻害剤の効果を評価したいと考えている。また、HIVの逆転写過程そのものを阻害するための新たな抗HIV戦略の開発もすすめており、化合物候補のスクリーニングを行うためのY2Hを用いたプラットホームがほぼ完成できたので、それをつかって、候補を決め、新規抗HIV剤の候補として適当であるか評価したい。
|
次年度の研究費の使用計画 |
研究の進捗状況に合わせ、予算を執行し、また、効率的な物品購入により生じた結果である。 消費税の増税および、円安による試薬の高騰が多少なりとも影響が出始めているため、研究をPDCAに則って展開するために、必要な経費として効率的に使用したいと考えている。
|