研究課題
平成27年度は,サイトカイン/細胞増殖因子による亜鉛輸送体の発現調節を検討した。その結果,TGF-βがZIP8の発現を選択的に誘導することが明らかになった。内皮細胞においてTGF-βシグナルは細胞膜上に存在する受容体ALK1およびALK5に介在される。そこで,各受容体のsiRNAを用いた発現抑制により,ZIP8 mRNAの誘導に関わる受容体を検討したところ,ALK5の発現抑制によりTGF-βによるZIP8 mRNAの誘導が抑制されたのに対し,ALK1の発現抑制ではほとんど変化が見られなかった。また,ALK5に特異的な阻害剤であるLY364947を処理した場合も同様に,ZIP8 mRNAの誘導が抑制されたことから,内皮細胞においてZIP8を誘導するTGF-βシグナルはALK5に介在されることが示唆された。次に,ALK5の下流シグナル分子を検討したところ,TGF-βの濃度依存的なSmad2/3の活性化が見られ,Smad2 siRNAおよびSmad3 siRNAによりZIP8 mRNAの誘導が抑制された。TGF-βにより,ERK1/2,p38 MAPK,JNKのリン酸化が認められたが,p38 MAPK阻害剤SB203580がTGF-βによるZIP8 mRNAの発現上昇を抑制したのに対し,ERK阻害剤PD98059およびJNK阻害剤SP600125は影響を及ぼさなかった。ALK5阻害剤LY364947およびSmad3ノックダウンによりp38 MAPKのリン酸化は顕著に抑制されたが,Smad2ノックダウンのp38 MAPKのリン酸化への影響は小さかった。また,p38 MAPK阻害剤SB203580はSmad2/3のリン酸化に影響を及ぼさなかった。以上の結果から,TGF-βはALK5-Smad2/3-p38 MAPKシグナル伝達経路の活性化を介して特異的にZIP8の発現を上昇させることが明らかとなった。血管平滑筋細胞についても同様の検討を行い,このcell typeではTGF-βがZIP8の発現を選択的に抑制すること,その抑制はALK5/Smad2経路に介在されることが明らかになった。以上の結果は,血管組織におけるZIP8の発現がTGF-βによってcell type依存的に制御されていることを示している。
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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