研究課題/領域番号 |
24390037
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
伊藤 晃成 千葉大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (30323405)
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研究分担者 |
関根 秀一 千葉大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (70401007)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 薬剤性肝障害 |
研究概要 |
本研究では、薬剤性肝障害(DILI)リスクと関連するMHCとして知られるヒトHLA class I B*5701を肝臓に高発現させたTgマウスを作製し、DILI増悪・劇症化の動物モデルとしての利用を目指している。今年度は、マウス肝に内因性MHCがどの程度発現しているかmRNAレベルで調べた。その結果、少なくともマウス肝臓では陽性対象である脾臓と比較して遜色ない発現量が観察された。ヒト肝においてMHC classI発現は低いとする報告からすると、ヒトとマウスで種差があることが示唆された。しかし実験動物として汎用されるマウスでは多くの薬物で連投してもDILI増悪は見られず、一般的なマウスのMHC型では多くの薬物を抗原提示しない可能性が改めて示された。本研究では上述のヒトB*5701アリルを全身に高発現するマウスを作出予定であるが、今年度はこれに必要な材料作製を行い、ほぼ準備することができた。一方、本研究目的に関連して新たに、DILIからの回復を薬物が阻害する可能性についても検討を進めてきた。特に肝細胞を培養後に急速に毛細胆管が伸長する現象に着目し、種々のDILI薬物を添加して影響を見たところ、複数で阻害が見られた。特に劇症化DILIにより市場撤退したトログリタゾンでは臨床濃度に近接した濃度で見られる現象であったことからDILI発症増悪メカニズムに関連する可能性が示唆された。毛細胆管伸長にはミトコンドリア機能の重要性が知られているが、実際にここで影響の見られた薬物では多くでミトコンドリア機能障害を確認することができた。以上、今年度は最終年度に向けてDILI増悪における免疫系の関与を含めた動物モデルの作出のための準備をするとともに、新たにDILI増悪のメカニズムとしてDILIからの回復過程でミトコンドリア機能障害を介した肝細胞の極性形成不全の可能性を新たに見いだすことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の予定よりも遺伝子組み替え作業が難航したため。また、得られた組み替え遺伝子を組み込んだマウス個体を作出する前に、組み替え遺伝子が実際に翻訳され蛋白質として発現するかを培養細胞レベルでチェックする必要があるが、この際の抗体を用いた検出条件などの検討にも時間を要したため。
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今後の研究の推進方策 |
遺伝子改変動物については外部業者に委託する段階まできている。委託後は数ヶ月でマウス個体が納品される予定であるが、この間の時間を利用してマウスを利用して行う薬物投与実験の予備的な条件検討、末梢血細胞の単離と培養条件の決定などを並行して進めておき、受け入れ直後から迅速に本実験が遂行できるよう体制を整えておく。
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次年度の研究費の使用計画 |
遺伝子改変動物の委託の際に必要な材料構築に予定以上に時間を要したため、委託するに至らなかった。それに関連して他の実験も遅れたため。 遺伝子改変動物の委託に必要な材料がH25年度末にほぼ完成に至ったため、H26年度前半中に委託することを予定している。ここで前年度に使用予定であった経費を使用する。また、改変動物の納品後に行う予定の実験を前倒しで予備検討するための経費として前年度の経費を使用する。
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