研究課題/領域番号 |
24390044
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
後藤 薫 山形大学, 医学部, 教授 (30234975)
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研究分担者 |
藤井 聡 山形大学, 医学部, 教授 (80173384)
八月朔日 泰和 山形大学, 医学部, 准教授 (00372334)
田中 俊昭 山形大学, 医学部, 助教 (70536987)
中野 知之 山形大学, 医学部, 助教 (00333948)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ストレス応答 / アポトーシス / p53 / プロテアソーム / 核 / 小脳 / プルキンエ細胞 / 運動学習実験 |
研究概要 |
DGK(ジアシルグリセロールキナーゼ)は、DGの代謝を介するPKCの制御因子と考えられており、哺乳動物では10種のアイソザイムが報告されている。我々は、DGKファミリーの中でζ(ゼータ)型DGKが核移行シグナルを有し核内に局在すること、そしてラット脳虚血/低酸素実験にて海馬錐体ニューロンの核内から細胞質へ移行しアポトーシスの初期過程に関わる可能性を明らかにし、その分子メカニズムの解析を行っている。その過程でDGKζが、DNA損傷に応答してアポトーシスを誘導する癌抑制因子p53と結合することを発見した。HeLa細胞を抗がん剤の一つであるDoxorubicinで処理するとp53タンパクが核内に増加し細胞死が誘導されるが、我々はこの細胞実験系を用いて、細胞質局在型DGKζがp53の分解に関与することを明らかにした。また、DGKζ-KOマウスを用いた個体レベルの実験においては、カイニン酸投与による痙攣誘導モデルの海馬、および全身放射線照射モデルの脾臓において、p53の発現誘導が著しく増加することを見出した。この効果は、DGKζ遺伝子が欠損しているため、細胞質型DGKζによるp53タンパク発現誘導の抑制が起こらないことによるものと考えられた。また、新規DGKζ結合蛋白として Nucleosome assembly protein 1-like 1 (NAP1L1) および NAP1-like 4 (NAP1L4) を同定し、これらの過剰発現がDGKζの核-細胞質移行を誘導し、p53 の発現制御に関与する可能性を指摘した。一方、DGKε(イプシロン)は小脳プルキンエ細胞の樹状突起形質膜直下の滑面小胞体に検出され、DGKε-KOマウスは野生型マウスに比べ、協調運動の学習能力(ロータロッド試験)の低下を示した。以上より、DGKεは小脳における運動学習に関与する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで細胞レベルの実験系を用いて細胞質型DGKζによるp53抑制効果を解析してきたが、今年度の研究により、DGKζ-KOマウスを用いた個体レベルの実験を拡大し、放射線全身照射モデルを用いた実験を開始した。また、DGKζの新規結合蛋白を同定したことにより新しい研究の展開が可能となった。DGKεにおいては、電子顕微鏡レベルでの微細局在を解析し、KOマウスを用いた個体レベルの実験として、ロータロッド試験による運動学習能力を解析した。 すなわち、DGKζおよびDGKεの機能解析において、細胞レベルから個体レベルの実験系に研究を展開しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、細胞レベルから個体レベルの実験を充実させるとともに、DGKζに関しては新たに同定した結合蛋白(NAPs)の詳細な解析を行う。具体的には、NAPsによる細胞周期調節因子p21の制御機構を精査し、癌細胞の成長速度やストレス応答性との関連を追求する。またDGKζが核内から細胞質に移行する詳細な分子メカニズムを目指し、DGKζによる転写調節機構への関与を検討する。DGKεのに関しては、小脳プルキンエ細胞内でのカルシウム調節機構への関与を解析し、運動学習能力との関連を追求する。
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次年度の研究費の使用計画 |
DGK-KOマウスおよびDGK-TGマウスの繁殖および確認が遅延しており、予定していた実験に遅れが生じているため。 遺伝子改変動物の確認および繁殖体制を見直し、再作製も視野に含めて実験を行う予定である。
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