研究課題
1.アストロサイト由来の神経可塑性調節因子の探索:アストロサイトおよびニューロンの単独、共培養系をモデルにアストロサイト由来の神経可塑性調節因子の同定を試みた。野生型およびFABP7KOマウス由来のアストロサイトに対する質量分析の結果、VimentinおよびPEA15の発現強度が有意に変化していることが明らかになった(J Proteom Bioinform, 2015)。2.脂質ラフト形成および機能に対するFABP7の関与:カベオリンなどの膜脂質ラフト構成タンパク質の遺伝子発現調節にたいして、FABP7が担う役割について、当該遺伝子のプロモーター解析のための、メチル化抗体およびアセチル化抗体を入手し、chipアッセイ解析を開始した。3.ヒト精神疾患患者群の遺伝子変異の意義:スクリーニングの結果発見されたFABP7遺伝子変異の病態への関与を明らかにするために、変異遺伝子を培養細胞に遺伝子導入し、細胞内シグナル伝達系や脂質構成変化についての評価を行った。その結果、FABP7の一塩基変異の導入では、細胞内シグナル伝達や細胞分裂能に大きな変化が認められないことが判明した。また脂肪酸の細胞内取り込み実験に着手し、現在解析を進めている。4.免疫系細胞におけるFABPの機能:肝マクロファージに発現するFABP7の免疫応答に担う役割を明らかにするために、高脂質食接種モデルを作成し、野生型とKOマウス間の、脂肪肝や脂肪組織炎症の差異について検討を行った。その結果、FABP7KOマウスでは、高脂肪食摂取に伴う脂肪肝や脂肪組織炎症の進行が、野生型に比べて遅れていることが示唆された。現在、動物数を増やし詳細な検討を加えている。
2: おおむね順調に進展している
アストロサイトの質量分析の結果については、論文発表を行った。また予定していた遺伝子のプロモータ解析についても、順調に研究材料の準備を終え、実験に着手した。さらに予備実験の結果からは、支持細胞のFABPの機能傷害が、肝臓や脳の正常機能のみならず、炎症や精神疾患病態に深く関連することを実験的に確認することができた。
FABP7のエピゲノム制御に担う役割について、実験データを更に蓄積し論文発表を目指す。またグリア細胞における脂質ラフトの機能的意義を更に強固にするために、ラフト分画を用いた解析に加え、電子顕微鏡を用いた解析も加える。
H27年度より申請者が東北大学に異動となり、新たな実験室立ち上げによる本研究遂行のための必要な設備の一部、および物品の一部を購入する必要が生じたため。さらに最終年度に成果発表、旅費として計上する費用が予定より多くなるのに加え、プロモータ解析をH27年度に集中して行うため。
プロモータのエピゲノム解析に必要な実験試薬、および細胞実験に必要な倒立顕微鏡は、6月中に導入する見込みであり、実験は円滑に進行する予定である。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 8件、 オープンアクセス 6件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (11件)
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