研究概要 |
本年度は、AVPニューロン特異的に概日時計機構を欠失したマウス(Avp-Bma11-/-マウス)について、自発活動概日リズムや視交叉上核(SCN)における遺伝子発現等の、詳細な解析を行った。また、Avp-Bma11-/-マウスのSCN神経ネットワークに於ける異常を明らかにするため、SCNスライスを用いた発光イメージングによる解析をスタートした。さらに、AVPニューロン特異的に固有概日周期を延長させたマウスを作成し、予備的な解析を行った。末梢臓器機能の調節において、脳内食餌同調性概日ペースメーカーが役割を果たすのかについての検証にも取り組んだ。 その結果、Avp-Bmall-/-マウスはSCNニューロン間の同調に異常を生じていること、AVPやProkineticin2, Rgs16等AVPニューロンの機能に重要であると考えられる因子の発現が著しく低下していること等を明らかにした。また、AVPニューロン特異的に固有概日周期を延長させたマウスは、自発活動リズムのフリーラン周期が約50分延長するとの予備的な結果を得た。さらに、脳内食餌同調性概日ペースメーカーは、胃に内在する概日時計が食餌のタイミングに速やかに同調するために重要であることを明らかにした。 これは、SCN・AVPニューロンがSCNニューロン間の同調やSCN神経ネットワークによるpace-makingに重要な役割を担うことを示唆しており、概日リズム中枢・SCNの動作原理を明らかにする上で非常に意義のあるものである。また、脳の食餌同調性概日ペースメーカーが末梢臓器機能に果たす役割はこれまで全く知られておらず、本研究結果は脳内食餌同調性概日ペースメーカーによって胃の生理機能が調節されることを示唆しており、摂食と概日リズムの相互作用を理解する上でも、意義あるものである。
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