研究課題
基盤研究(B)
二本鎖RNA(dsRiNA)は細胞内においてRNA干渉(RNAi)を引き起こすが、dsRNAは細胞外に分泌されて、別の細胞にも伝播し、RNAiを引き起こすことが知られている。これをsystemicRNAiと呼ぶ。dsRNAの細胞間移動に関わる分子としては、SID-1という膜蛋白質が知られており、dsRNAの取り込みに関わっている。しかし、この現象の全体像はほとんど理解されておらず、今後の解明が待たれる。本研究では、RNAi伝播がよく起こることが知られている線虫を用いて関わる分子の同定とその作用機序を解明し、ヒトなどの哺乳類細胞で同様のことが起こるかを検証するアプローチを取っている。dsRNAの細胞内への取り込みにはエンドサイトーシスが関わるのではないかという仮説の下に、エンドサイトーシスの経路に関わる分子群についての線虫変異体を用いて、取り込みの程度をsystemicRNAiの効果の強度と関連付けて調べるている。クラスリン依存性経路、カベオラ依存性経路、CLIC/GEEC経路、マクロピノサイトーシス経路などの代表的な分子をコードする遺伝子の変異体を検索したところ、マクロピノサイトーシスに関わる分子の欠失変異体ストレインRB733において、顕著なsystemic RNAiの異常が観察された。擬体腔へのdsRNAのインジェクションでも表現型が再現し、一方、細胞に直接マイクロインジェクションを行うと、RNAiは正常に起こるため、細胞外から細胞内への取り込みの過程で働いていることが示唆される。今後は、作用機序をより細胞生物学的なレベルで検証し、サプレッサー遺伝子等の解析により、相互作用する分子の同定などを行うことでより詳細なメカニズムを明らかにする予定である。
2: おおむね順調に進展している
RNA干渉の細胞伝播に関して、伝播異常を呈する変異体の同定と、その表現型の特徴の記載ができた。遺伝子の構造から、研究期間内に作用部位と機能を理解できる可能性が高い。
引き続き、同定した遺伝子の構造と機能相関、他の遺伝子産物との相互作用等を解析し、論文発表を目指す。また、本現象に関連する新規遺伝子の追加同定とその機能解析を行い、全貌を明らかにする。
すべて 2012 その他
すべて 雑誌論文 (13件) (うち査読あり 13件) 学会発表 (6件) 図書 (1件) 備考 (1件)
PLoS Genetics
巻: 8 ページ: e102617
10.1371/journal.pgen.1002617
Mol. Biol. Cell
巻: 23 ページ: 1728-1741
10.1091/rabc.El1-10-0857
Proc. N. A. S.
巻: 109 ページ: 8079-8084
10.1073.pnas.110589109
Biochem. Biophys. Res. Comm.
巻: 423 ページ: 478-483
10.1016/j.bbrc.2012.05.145
Curr. Biol.
巻: 22 ページ: 1267-1275
10.1016/j.cub.2012.05.052
巻: 22 ページ: 1276-1284
10.1016/j.cub.2012.06.004
Cell Death and Differentiation
巻: 19 ページ: 1398-1407
10.1038/cdd.2012.19
PLoS One
巻: 7 ページ: e43050
10.1371/journal.pone.0043050
Genes to Cells
巻: 17 ページ: 748-757
10.111/j.1365-2443.2012.01627.x
巻: 17 ページ: 778-789
10.1111/j.1365-2443.2012.01627.x
巻: 109 ページ: 18465-18470
10. 1073/pnas. 1204652109
G3: genes, genomes and genetics
巻: 2 ページ: 1415-1425
10.1534/g3.112.003830
Biosci. Biotech. Biochem.
巻: 76 ページ: 2168-7172
http://www.twmu.ac.jp/Basic/physiol2/