研究概要 |
腎糸球体スリット膜に存在するTRPC6チャネルを含む蛋白質-細胞骨格複合体を介したCaシグナル伝達のダイナミクスの精査を通じ、腎糸球体の濾過機能の制御や破綻の機序を明らかにすることを目的として研究行った。平成24年度は、糸球体スリット膜における機械刺激受容・伝達のエッセンスを再現できる最小の実験系の再構築(TRPC6、podocin、nephrin等の共発現系)、不死化した足細胞の電気生理学的検討、及びこれを用いた疑似スリット膜の作成法の確立に集中して研究を進めた。その結果、(1)TRPC6、podocinの2分子のみの共発現は、機械刺激に対する感受性を減少されることが示唆された。また、ヒトTRPC6に報告された家族性糸球体硬化症(FSGS)の遺伝子変異P112Q, M132T, N143Sについても発現系で検討し、これらの変異によって受容体刺激や機械刺激に対する応答が著しく変化していること、その原因としてTRPC6チャネルのN末端とアクチン細胞骨格との物理的結合の変化が関与している可能性が明らかとなった。更に、マウス不死化足細胞の分化誘導によって受容体刺激によるTRPC6チャネル活性化が著しく増加すること、この足細胞で作成した疑似スリット膜のアルブミン透過性(蛋白質漏出の指標)が、過剰な受容体刺激や機械刺激によって有意に増加することを見出した。これらの結果は、第86回日本薬理学会年会シンポジウムで発表した。
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