研究課題/領域番号 |
24390054
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
井上 隆司 福岡大学, 医学部, 教授 (30232573)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | スリット膜複合体 / 糸球体硬化症 / Ca情報伝達 / TRP蛋白質 / 受容体刺激情報伝達 / 機械刺激情報伝達 / 足細胞 / 濾過機能 |
研究概要 |
本研究では、腎糸球体の濾過機能の制御や破綻の機序を明らかにすることを目的とし、腎糸球体スリット膜に存在するTRPC6チャネルを含む蛋白質‐細胞骨格複合体を介したCaシグナル伝達のダイナミクスを詳しく検討している。平成25年度は、初年度に確立した腎糸球体スリット膜最小再構成系(TRPC6、podocin、nephrin等の共発現系)や不死化足細胞の疑似スリット膜を用いた解析、及び足細胞の電気生理学的検討に注力した。その結果、(1)podocinやnephrinの共発現によって、TRPC6チャネルの受容体・機械刺激応答が有意に変化することを見出した。(2)TRPC6チャネルにおけるヒト家族性糸球体硬化症(FSGS)の遺伝子変異(N端;P112Q, M132T, N143S)によっても(1)と同様の機能的な変化が生じることが明らかとなり、その原因として、TRPC6チャネルのN末端とアクチン細胞骨格との物理的結合の変化が関与している可能性が示唆された。(3)疑似スリット膜のアルブミン透過性(蛋白質漏出の指標)は、過剰な受容体刺激や機械刺激や、腎糸球体の起炎処置(puromycin aminonucleosideやTGF-beta処置48時間)によって有意に増加し、これと平行してTRPC6 mRNAの発現上昇が観察された。更に、単離足細胞において、同様の処置によるTRPC6チャネル応答性の亢進が観察された。以上の結果は、腎糸球体スリット膜の機能破綻とTRPC6の過剰な受容体・機械刺激応答性の密接な因果関係のみならず、適度なTRPC6活性がスリット膜の正常機能維持に有効な方法であることを強く示唆しており、今後の薬物治療の標的としてのTRPC6の有望性を示していると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
最小構成系、疑似スリット膜による機能評価実験によって、腎糸球体スリット膜機能とTRPC6活性の相関を明らかにすることができ、本研究目的の達成に向け大きく前進することができた。
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今後の研究の推進方策 |
上記の実験モデルを活用した、腎糸球体スリット膜の物質透過性制御の分子メカニズムの解明と、その破綻した病態に対する薬物治療戦略(プロテインキナーゼG活性化薬等)の探索を更に進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
H25年度末にFRETを用いた実験を開始したが、新たに励起用フィルター等を追加購入する必要があることが判明した。新年度(H26年度)の補助金入金は数か月後になるため、H25年度末の消耗品・旅費等に対する支出を極力抑え、残った基金部分70万円を繰り越して至急購入に当てることとした。 最初のFRETシステム(DG-4 + Dual View2)では分子内FRETの検出しか可能でなかったが、研究を進める過程で2分子間FRETによる測定が必要であることが判明した。このために、励起装置内に新たに3種類の励起フィルタ-(CFP, YFP, FRET用)を設置することが必要となった。フィルターは一つ当たり10-20万円するため、研究の遅れを避けるためには、上記の繰り越したH25年度基金部分で早急に購入するのが、最も妥当であると判断した。
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