研究課題/領域番号 |
24390062
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
五嶋 良郎 横浜市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00153750)
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研究分担者 |
及川 雅人 横浜市立大学, 生命ナノシステム科学研究科(八景キャンパス), 教授 (70273571)
中村 史雄 横浜市立大学, 医学部, 准教授 (10262023)
鈴木 勉 星薬科大学, 薬学部, 教授 (90130757)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ドーパ / 眼白子症 / 神経伝達物質 / G蛋白質連関型受容体 / OA-1 |
研究概要 |
薬理学あるいは生命科学領域において、新たな生理活性物質を発見し、その生体内における役割、および病態生理学的意義を明らかにすることは最も重要な課題の一つである。ドーパは従来、もっぱら神経伝達物質ドパミンの前駆体としてのみ位置付けられ、それ自体は活性がないと考えられてきた。我々は、ドーパが神経興奮に応じて遊離されること、ドパミンへの変換を介さずに一定の薬理学的応答を惹起すること、ドーパ作用を競合的に阻害する拮抗薬が存在することを示し、ドーパ神経伝達物質仮説を提起した (Misu and Goshima, 1993)。従来までに、ラット孤束核 (NTS) におけるOA1のshRNAによる発現抑制が、同部位に微量注入したドーパが惹起する血圧下降・徐脈応答を抑制する一方、グルタミン酸を微量注入した際の同様の心血管応答には無作用であることを証明した(Hiroshima et al, 2014)。またOA1に対する特異抗体を作製し、マウス脳における免疫組織化学的解析を行った。その結果、OA1のシグナルはNTS領域に発現すること、その他の脳部位、視床下部正中隆起、嗅球、大脳皮質、海馬、小脳などに広く分布することを見いだした(投稿準備中)。oa1遺伝子欠損マウスの作製に成功し、ドーパのNTSにおける血圧下降・徐脈応答が、OA1を介するものであるかどうかを確認した。同欠損マウスにおいて、NTSに微量注入したドーパの作用は全く見られなかった。一方、微量注入グルタミン酸応答は野生型と比較し、差が認められなかった。さらに、フェニレフリンの末梢静脈内投与による圧受容器反射機能を評価した。oa1遺伝子欠損マウスにおいては、フェニレフリンによる圧受容器反射機能が低下するとの結果が得られた。本結果は、OA1が生体内において血圧調節を含む自律神経系機能調節に一定の役割を果たす事を示す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
oa1遺伝子欠損マウスの作製に成功した。この遺伝子改変マウスの表現型解析により、OA1が、NTSにおけるドーパ応答を媒介する受容体であることの確証を得ることができた。さらに、OA1に特異的抗体の作製に成功し、脳内を中心とする生体内局在を明らかにしつつある。こうした状況の中、新たにoa1遺伝子欠損マウスにおいてフェニレフリンによる昇圧と圧受容器反射低下が見出された。この知見は、OA1が血圧制御を担う分子として生体内で作動していることを示す。またOA1の広範な生体内分布は、従来の予想を超えたドーパーOA1シグナル伝達系の存在を示唆する。
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今後の研究の推進方策 |
oa1遺伝子欠損マウスにおけるフェニレフリン昇圧・圧受容器反射機構の低下の責任部位を明らかとするため、中枢神経系と末梢神経系および血管平滑機能の各々のフェニレフリン応答を野生型と比較・検討する。OA1分布の認められた視床下部、海馬、大脳皮質、嗅球などの脳内部位が担う生理学的機能(学習記憶、内分泌機能、嗅覚、知覚神経機能など)を評価する。また、引き続き、OA1のリガンド探索、薬物依存への関与等についても検討を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の計画では、テレメトリー自動計測システムを計上した。しかし、マウスその他の消耗品や試薬品の使用が予想を超えたものであったため、同機器の導入を見送ることとした。現時点においても、無麻酔下の血圧測定の必要性は高く、今後も導入の可能性を見出していく必要性がある。 oa1遺伝子欠損マウスの表現型解析を進めるとともに、臓器、細胞レベルにおける解析を行う。そのため、神経、平滑筋あるいは内皮細胞の初代培養細胞を用いた実験を行うために必要な試薬、培養メディウム、培養シャーレ、プレートなどの使用が主な使途となると予想される。また、oa1遺伝子欠損マウスの表現型解析を電気生理学、行動解析、脳内微量透析法などにより多角的に行う必要性があるため、これらの実験に必要な動物、消耗品を使用することとなる。
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