研究課題
本研究では、「補欠分子族ヘムが転写因子Bach1およびBach2のシグナル分子(リガンド)として自然免疫を制御する」ことを明らかにすることを目標とした。具体的には、Bach2はヘム受容体であり、そのノックアウトマウスでは重篤なマクロファージ機能異常が生じるという独自の知見に着目し、自然免疫系におけるBach2(および関連因子Bach1)の下流標的遺伝子ネットワークと、ヘムによる遺伝子発現制御を解明することを目指した。まず、組み換えヘモペキシン発現精製系を開発し、細胞外分泌シグナルなどを工夫することで効率良く高純度組み換えヘモペキシンを生成するプロトコールを確定した。さらに、これを用いたヘム-ヘモペキシン複合体の調整法を確立した。このヘム-ヘモペキシン複合体を用いて、細胞外ヘムがヘモペキシン複合体としてエンドソーム依存的に取り込まれ、遊離したヘムが転写因子Bach1を不活性化することで下流遺伝子の発現を誘導するという一連の情報伝達経路を証明することができた(BBA, 2014)。また、組織マクロファージ分化とBach1やBach2の関係についても大きな進展があった。国際共同研究を実施することで、ヘム-Bach1経路が組織マクロファージ(赤脾髄マクロファージおよび骨髄マクロファージ)の分化を制御することを証明することができた(Cell, 2014)。一方、Bach2は肺胞マクロファージの機能調節に必須であることを発見した(J. Exp. Med., 2013)。Bach2ノックアウトマウスは、ほぼ正常に産まれてくるものの、生後数ヶ月から呼吸不全を来たし、半年程度で死に始める。この短命の主な原因は肺胞サーファクタントの異常蓄積にあること、肺胞マクロファージが十分な機能を発揮できず、サーファクタントの恒常性を維持できなくなることを見いだした。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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