研究概要 |
本研究では、細胞内セカンドメッセンジャーであるボスファチジルイノシトール-3,4,5-三リン酸(PIP3)を、アシル基の観点から細分してとらえ、多種類であることを明示する。そのために、脂肪酸組成を含めたPIP3の解析技術を開発する。そしてPIP3代謝酵素欠損マウスやアシル基転移酵素欠損マウスを利用して、PIP3分子種の動態変化と細胞機能変化とを包括して解析する。そのまず第一歩として、本年度は、1.新たなPIP3解析方法の確立、2.アシル基転移酵素の遺伝子改変マウスの作製、3.アシル転移酵素の安定発現株または発現抑制株の作製を行い、以下の成果を得た。1.体試料からの高回収の抽出方法や濃縮の設定、逆相液体クロマトグラフィーシステムへの吸着低減、質量分析計を用いた定量解析条件の設定を行うことで、PIP3分子種の高感度定量解析系の構築に成功した。2.アシル転移活性中心を含むエクソンを二つのloxP配列で挟み、ネオマイシン耐性遺伝子をFRT配列で挟んだターゲティングベクターを構築した。このターゲティングベクタを導入した変異ES細胞を単離し、C57BL/6マウスの胚盤胞に注入してキメラマウスを作製した。キメラマウスとC57BL/6マウスとの戻し交配後、Flpマウスと交配してネオマイシン耐性遺伝子を除去し、条件付き遺伝子改変マウスを作製した。3.薬剤誘導性にアシル転移酵素を発現またはノックダウンを可能とする細胞株を作製した。今後はこれらの独自のツールを用いた解析を進める。
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