研究課題
本研究では、細胞内セカンドメッセンジャーであるホスファチジルイノシトール-3,4,5-三リン酸(PIP3)を、アシル基の観点から細分してとらえ、多種類であることを明示する。そのために、脂肪酸組成を含めたPIP3の解析技術を開発する。そしてPIP3代謝酵素欠損マウスやアシル基転移酵素欠損マウスを利用して、PIP3分子種の動態変化と細胞機能変化とを包括して解析する。本年度は、昨年度までに構築完了した新規のPIP3分子種解析法を用いて、SHIP1欠損細胞とPTEN欠損細胞におけるPIP3分子種について解析した。その結果、両者ともに変動するPIP3分子種と、片方のみで変動するPIP3分子種が存在することを見出した。次に、SHIP1およびPTENの過剰発現細胞を作製してPIP3分子種を比較したところ、欠損細胞で変動したPIP3分子種の減少を確認することができた。3種のLysoPIアシル転移酵素欠損マウスにおけるPIの分子種を測定したところ、2種については既報の分子種の変化が確認できたが、1種についてはこれまでの報告とは異なる分子種の変化が認められた。これら3種のLysoPIアシル転移酵素欠損マウスとSHIP1欠損マウスとを交配したところ、SHIP1単独の欠損マウスの表現型を回復させる分子が存在することを見出した。そこでSHIP1とLysoPIアシル転移酵素のダブルミュータントマウスを用いて、PIP3分子種と細胞機能について解析を進めた。
2: おおむね順調に進展している
独自の遺伝子欠損マウスや測定技術を利用することで、当初の計画通り、PIP3分子種の変動と細胞機能についての解析が進んでいる。
PIP3分子種の動態変化と細胞機能変化の包括的解析をめざし、引き続きPIP3代謝酵素やLysoPIアシル転移酵素欠損マウスを利用した解析、リコンビナントタンパク質を用いた脱リン酸化活性測定、PIP3分子種の下流分子の同定を行う。
計画通りに研究は進展しているが、本年度に解析に着手している遺伝子欠損マウスを用いた解析を次年度にも引き続き解析する必要がある。そのため、本年度に計上していたマウス実験関連経費の一部を次年度に繰り越した。次年度に繰り越した研究費は、遺伝子改変マウスの飼育、実験関連経費として使用する。
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