研究課題
基盤研究(B)
ヘルパーT細胞(CD4T細胞)と細胞障害性T細胞(CD8 T細胞)への運命決定は、胸腺における 抗原認識様式に依存した相互排他的な分化過程である。我々は、CD4T細胞が末梢組織においてCD8T細胞に再分化することを発見した。強い抗原刺激に加え、Interleikin-2 (IL-2)、レチノイン酸、Transforming Growth Factor-β1(TGF-β1)によって、CD4 T細胞はCD8αα T細胞に分化することを見いだし、この分化にはRunx3が必要である事もわかった。さらに、CD8αα+TCRαβ T細胞のなかには、活性化T細胞を特異的に抑制する細胞群の存在が知られていることから、CD4由来CD8aaT細胞の免疫反応抑制機能を、自己免疫疾患モデルマウスを用いて評価した。その結果、CD4 T細胞からCD8αα T細胞への分化に障害を持つRunx3-/- T細胞をもつマウスでは、実験的アレルギー性脳脊髄炎からの回復に障害があることが明らかになった。このことから、CD4由来CD8aaT細胞は、ある種の免疫抑制機能を持つことが示唆された。さらに、この『CD4T細胞から誘導されたCD8T細胞』の遺伝子発現を網羅的に解析し、他の制御性T細胞『iTreg細胞(Foxp3+CD4T細胞)』と遺伝子発現と比較することによって、『CD4T細胞から誘導されたCD8T細胞』分化機構に関与する可能性のある候補遺伝子群を同定した。
2: おおむね順調に進展している
平成24年度の研究から、CD4T細胞からCD8aaT細胞分化に必要なシグナル分子と転写因子の一部は明らかになった。この細胞群で特異的に発現する遺伝子を調べたことから、この分化過程をより詳細に解析するための基礎的dataは得られた。この研究の進行ペースは当初の予定と大きく異ならない。
今後、この細胞群の分化過程を理解することを通じて、『CD4由来CD8aaT細胞』分化の亢進や抑制を制御することを一つの目標とする。また様々な免疫反応における『CD4由来CD8aaT細胞』の機能を評価することによって、複雑な免疫反応制御機構を詳細にわたって理解するための足がかりとなる情報を収集する。
遺伝子破壊マウスの成育不全や、環境変化などによって、予定通りに交配がすすまなかった結果、移植に用いる胎生肝細胞の確保に支障を来している。その結果、移植による再構築実験に用いる胎児の確保が遅れ、この実験の期間を延長する必要性が生じた。必要なマウスを確保するために、さらなる交配を持続する必要が生じている。移植に用いる胎児を得るために必要な、親となるマウスを確保するための交配が遅延したため、胎性肝由来免疫細胞をもったマウスの作成に支障をきたしている。この胎性肝由来免疫細胞をもったマウスを用いた実験、データ解析、さらには、この実験に関する研究打ち合わせ、成果発表が実施できていない。実験期間の延長により、実験用消耗品、研究打ち合わせ旅費、データ解析謝金、成果発表のための印刷費が次年度に必要である。
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Scientific Reports
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Bone
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